コラーゲンという物質が一般に広く知られるようになったのは、1990年代に入ってからのことです。この時期から、コラーゲンという言葉はさまざまな場面で使われるようになり、多くの人々にとって美容や健康に良い影響を与えるものとして受け入れられるようになりました。
「コラーゲンが豊富」と宣伝された製品を目にすると、つい手に取ってしまう方も多いことでしょう。「これを摂取すればお肌に良さそう」と感じるのも、十分に理解できることです。
しかしながら、現在においてはさまざまな研究が進行中であり、多種多様なサプリメントや健康補助食品が市場に出回っていますが、それらが本当に美容や健康に対して期待される効果をもたらすのかどうかについては、まだ明確な答えが出ていないのが現状です。
コラーゲンとは何か
そもそも、コラーゲンとは一体どのような物質なのでしょうか。人体は水分と脂質を除くと、主にたんぱく質で構成されています。その中でもコラーゲンは特に重要なたんぱく質の一種であり、皮膚や骨、血管などに多く含まれています。実際、人体全体のたんぱく質の約30%はコラーゲンで占められているのです。
ただし、コラーゲンの量は加齢とともに徐々に減少していきます。このコラーゲンが減少すると、皮膚の潤いやハリ、弾力が失われてしまったり、骨密度が低下して骨粗鬆症を引き起こしたり、また軟骨が減少することで関節に痛みが生じるといった問題が発生することがあります。
コラーゲンを食べると効果がある?
先に述べたように、コラーゲンはたんぱく質の一種です。しかし、たんぱく質は体内にそのまま吸収されるわけではありません。栄養分は小腸で吸収される際、たんぱく質はその分子が大きいため、小腸の壁を通過することができないのです。
このため、胃や膵臓、小腸の壁から分泌される消化液によってアミノ酸に分解され、その後小腸で吸収されることになります。そして、吸収されたアミノ酸は体内で再びたんぱく質に合成され、体の一部として機能するのです。
繰り返しになりますが、コラーゲンはたんぱく質の一種です。つまり、コラーゲンも体内でアミノ酸に分解されてしまうため、コラーゲンを食べたり飲んだりしたとしても、直接的に皮膚や骨に届いて利用されることはありません。そのため、コラーゲンそのものを摂取することによって、美肌効果や膝の軟骨の減少を抑えるといった効果は基本的には期待できないというのが実情です。
もちろん、全く効果がないとは言い切れませんが、期待できる効果は限られているのが現実です。コラーゲンが豊富に含まれている食材として、鶏の手羽先やホルモン、フカヒレなどが挙げられますが、これらの食品を摂取したからといって、すぐに美肌になるわけではありません。
とはいえ、これらの食品が体に害をもたらすわけではなく、たんぱく質を摂取すること自体には明らかに意義がありますので、美味しく楽しんでいただくのが最も良いでしょう。
コラーゲンよりビタミンC
先ほど、体内に吸収されたアミノ酸が再びたんぱく質として合成されることを説明しました。もちろん、コラーゲンもまたたんぱく質であるため、私たちの体内で合成される際には、アミノ酸の他にビタミンCや鉄分も必要不可欠です。
美肌効果を期待するのであれば、単にコラーゲンを摂取するだけでは不十分であり、たんぱく質とともにビタミンや鉄分をバランスよく摂取することが極めて重要です。ビタミンCは野菜やフルーツに豊富に含まれ、鉄分はレバーやマグロなどの食品に多く含まれています。これらの栄養素を意識的に取り入れることが、健康的な食生活の実現には大切です。
コラーゲン界の救世主、コラーゲンペプチド
このように、美容や健康効果が謳われてはいるものの、その効果には懐疑的な見方が多かった中で、最近になって実際に効果が見込まれるという研究が登場しています。その中心的な物質がコラーゲンペプチドです。
ペプチドとは、いくつかのアミノ酸が結合したもので、たんぱく質は多くのアミノ酸が結合して大きな分子を形成していますが、ペプチドは比較的少数のアミノ酸からなる小さな分子です。コラーゲンペプチドは、コラーゲンが分解されてできた小さな分子であり、これによってコラーゲンが通過できなかった小腸の壁を通り抜けることが可能です。
コラーゲンを摂取すると、一部は完全にアミノ酸に分解されて吸収されるわけではなく、ペプチドの状態で吸収され、皮膚にまで到達したという研究結果も報告されています。また、到達したコラーゲンペプチドが細胞にシグナル(信号)を送り、細胞を活性化させるという説も提唱されています。最近市場に出ているコラーゲン関連のサプリメントや健康食品の多くには、あらかじめ酵素によって分解されたこのコラーゲンペプチドが含まれていることが多いようです。
結局効果はあるのか、ないのか
このように、コラーゲン界に新たな光をもたらすかもしれないコラーゲンペプチドですが、その研究の多くが健康食品やサプリメントの販売元によるものであるため、まだその効果が客観的に認められたとは言い切れない状況です。
それでも、その研究には今後の発展の可能性が見込まれているため、今後の進展に期待を寄せたいところです。
まとめ
まとめとして言えることは以下の通りです。
– コラーゲンそのものは直接的に人体に吸収されることはない。
– コラーゲンペプチドには将来的な可能性があるが、研究はまだ進行中である。
– コラーゲンを摂取しても体内のコラーゲンの量には直接的な影響はないが、ビタミンCや鉄分は体内でのコラーゲン生成に必要不可欠である。
このように、あまり意外性のない結論ではありますが、美肌を目指すためにはバランスの取れた食生活が最も重要であると言えるでしょう。
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