書店やインターネットを検索すると、ダイエットに関する書籍が数多く並んでいますが、実際に購入しようとすると、その選択肢の多さに困惑してしまうことはないでしょうか。どの本を選ぶべきか迷ってしまうことがあるのは、非常に普通のことです。
どの書籍も著者が自らの経験を通じて実践し、効果を上げたという背景があるため、特に誤ったダイエット方法を解説しているものは存在しないと感じられがちです。そのため、「この本を手に取れば、必ずダイエットが成功するはずだ」と期待してしまうことも無理はありません。
「ずぼらダイエット」や「押すだけダイエット」、「運動なしでダイエット」、「自然に痩せていくダイエット」、「糖質オフダイエット」、「オートミールダイエット」、「ゆる断食ダイエット」など、さまざまなスタイルのダイエット本があふれています。しかし、実際に購入して実践した後に「自分には合わなかった」と感じたことがある方も少なくないでしょう。
これは非常に理解できることです。たとえ多くの人が成功したとされる方法であっても、その方法が自分自身に適しているかどうかは別の問題です。「筋力トレーニングを通じて自分を追い込むことができるのか」「食事制限をし、空腹を我慢できるのか」といった、自分の強みや限界を理解することが最初のステップです。ダイエットは、ある程度の我慢や努力が求められることが多いですが、その我慢や努力を少しでも軽減できる方法を選ぶことが理想的ですよね。
ダイエットって何?
ここからは、ダイエットの本質についてお話ししたいと思います。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉は、孫子の兵法書に由来する名言です。敵と味方に関する情報をしっかり把握していれば、何度戦っても負けることはありませんが、敵のことを知らずに味方だけを知っている場合、勝ったり負けたりが続き、最終的には勝負がつかなくなります。また、敵も味方も知らないままでは、必ず敗北を喫するという意味が込められています。
ダイエットにおいても、この考え方は同様に適用できるでしょう。自分の身体を理解し、ダイエットの障害とされる「食事法」や「運動方法」を把握することで、成功へとつながるのではないでしょうか。
実際、「diet」という言葉は「食べ物を食べる」や「日常的に食べている食材」、「減量希望」や「スリムになりたい」といった多様な意味を持っています。しかし、この「diet」の最も基本的な意味は「食事を摂取すること」または「食事療法」であり、「運動によって体重を減らす」という要素は含まれていません。したがって、「diet」という言葉と運動の間には、直接的な関係はないのです。
そうなのです!実際にはダイエットの本質は食事のコントロールにあります。しかしながら、テレビ通販やインターネットで見かけるダイエット商品には、「一食置き換えダイエット」や「リンゴダイエット」などの偏った食事法が多く存在し、また「EMSを使った簡単な筋力トレーニング」や「ながら運動でダイエット」といった、手軽にダイエットができるという印象を与える方法があふれています。
果たして、ダイエットは単なる食事制限と簡単な運動で成功するのでしょうか?
そんな安易な考え方をしていると、理想の体型に到達することは難しいでしょう。前述の通り、正確な情報なしには成功も難しいのです。どのスポーツでも戦略が必要であり、相手を分析し、弱点を見つけ、勝つための詳細な戦略を練った人が勝者となります。勝つために何をすればいいのかを知っている人が勝ちます。たとえ素晴らしいスーパースターが一人存在したとしても、そのスーパースターを適切に活かせなければ、勝負には敗れてしまいます。
ダイエットもまた同じです。
ただ漠然とダイエットに取り組むだけでは、一時的に体重を減少させることができても、すぐにリバウンドしてしまったり、痩せたとしても健康に悪影響を及ぼす方法だったり、いくら運動しても体重が減らなかったりと、さまざまな壁に直面し、挫折という残念な結果につながる可能性が高くなります。
まず初めに、自分の身体を知ることから始めなければ、成功する可能性も低くなります。したがって、書店やネットで目を引く魅力的なタイトルに惹かれて、無目的にダイエット本を購入することには意味がないのです。
まずは自分を理解しましょう。
基礎代謝を把握する
基礎代謝とは、体温の維持や呼吸、心臓の動きなど、人間が生きるために必要な最低限のエネルギーのことを指します。驚くべきことに、この基礎代謝は消費されるエネルギーの中で約70%を占めています。残りの約30%は、食事に関連する食事誘発性熱産生や運動時の運動誘発性熱産生が含まれますが、生きていくための基礎代謝がほとんどのエネルギーを占めているのです。
では、自分の基礎代謝を知るにはどうすればよいのでしょうか?
性別、身長、体重、年齢といった情報から導き出される推定式があります。日本国内では国立健康・栄養研究所が提唱している「国立健康・栄養研究式」が、ほぼすべての年齢層において比較的妥当性が高いとされていますが、これはあくまで推定式であり、他にもさまざまな計算式が存在するため、参考程度に考えていただければと思います。
男性の場合の計算式は以下の通りです:
(0.0481×体重 + 0.0234×身長 – 0.0138×年齢 – 0.4235)×1000/4.186
女性の場合は:
(0.0481×体重 + 0.0234×身長 – 0.0138×年齢 – 0.9708)×1000/4.186
基礎代謝を正確に測定するには様々な条件を満たす必要があり、その条件を整えるのが難しいため、一般的には上記のような推定式を用いることが多いのです。
基礎代謝は通常、10代の頃がピークであり、年齢が上がるにつれて減少傾向にあるとされています。その理由としては、筋肉量の減少や各臓器のエネルギー消費量の低下が挙げられています。また、ストレスや生活習慣の乱れが自律神経を乱し、基礎代謝が徐々に低下してくることも考えられます。
筋肉量の減少の原因としては、年齢とともに身体を動かさなくなることによる廃用や、過度の食事制限によって栄養のバランスが崩れ、筋肉を維持できなくなることが挙げられます。そのため、筋肉量が減少すると基礎代謝能力が低下してしまいます。
特に40歳を過ぎると、基礎代謝は急激に低下していく傾向があります。
ダイエットの本質に運動が含まれていないという点に触れましたが、基礎代謝を向上させるためには筋力トレーニングが非常に効果的であると考えられます。
血糖値を把握する
血糖値という言葉は非常に一般的ですが、ダイエットとはどのように関わっているのでしょうか?糖尿病の方には「血糖値のコントロールはできていますか?」という質問がよく見られますが、これは病気の際に注意すべき数値と感じる方も多いのではないでしょうか。
「糖尿病にならないために」あるいは「糖尿病になった際に注意すべき数値」と考えている方は、今すぐその考え方を見直す必要があります!
血糖値は、ダイエット時にも注意が必要な重要な数値です。実は、血糖値とダイエットは非常に密接に関連しています。
では、血糖値についてもう少し詳しく理解してみましょう。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度を指し、血中のブドウ糖を総称して血糖と呼んでいます。したがって、血糖値は血液中の血糖濃度を示す指標となります。
つまり、血糖値は食事から摂取する成分に大きく影響されるのです。この数値は年齢や疾患によって変化するため、ダイエットに関する観点からは詳しく触れませんが、その影響を理解しておくことは重要です。
食事が血糖値に与える影響を理解した上で、血糖値とダイエットの関係について考えてみましょう。
食事を摂取すると、食物に含まれる糖分が吸収されて血糖値が上昇します。この上昇に対抗するために、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリン!
誰もが一度は耳にしたことがあると思いますが、このインスリンの働きがダイエットに関連しているのです。血糖値を下げようとしてインスリンが分泌されるのは正常な反応ですが、血糖値が急上昇してしまった場合には問題が発生します。
要するに血糖値の変化のスピードとダイエットには密接な関係があるのです。
血糖値が急激に上昇すると、「血糖値が急上昇したから早く下げなければ!」と脳が認識し、大量のインスリンが分泌されてしまいます。
血糖値が下がるのだから、インスリンを多めに分泌しても問題ないのでは?と思うかもしれませんが、実はそうではありません。
食事摂取時の流れを簡単に整理すると、
① 糖質を摂取(特に空腹時)
② 血糖値が急激に上昇
③ インスリンが過剰に分泌
④ ブドウ糖がエネルギーとして使用される
⑤ 残ったブドウ糖はインスリンの働きにより中性脂肪に変換される
⑥ 筋肉や肝臓、脂肪細胞に蓄積される
そうなんです。インスリンは血糖値を下げるために不可欠な物質であり、非常に重要な役割を果たしていますが、糖の代謝を調節するホルモンでもあるため、血液中にブドウ糖が余ってしまうと、上記のように中性脂肪として細胞に蓄えるように働くのもインスリンの役割なのです。
この中性脂肪が細胞に蓄積され続けると、肥満へとつながります。
また、この状態を繰り返すことで、インスリンの働きが徐々に低下していきます。これは正常な反応ではあるものの、インスリンの能力が低下すると、普通の食事でも血糖値を下げるために過剰にインスリンを分泌する必要が生じてしまいます。
そうなると、再び余ったブドウ糖が中性脂肪に変換され、確実に脂肪が蓄積されていくことになります。
負のループが完成してしまうのです!
ただし、誤解しないでほしいのは、糖質は悪者ではないということです。摂取方法や摂取量を誤ると悪者になってしまうということです。糖質を敵にするか味方にするかは、自分自身の選択によるものであることを理解することが大切です。
まとめ
以上の2点を考慮に入れ、自分に合ったダイエット方法を見つけていくことで、無駄を省き、リバウンドを防ぎ、最短であなたが望む身体を手に入れることができるでしょう。
筋肉を味方につけ、血糖値を理解することで、これまで無駄に行っていたダイエットから解放され、効率的に自分の理想の身体を手に入れることが可能です。
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