流行の洋服を手頃な価格で手に入れることができるファストファッションは、私たちの生活に欠かせない存在となっています。日本全国に多くの店舗が展開されており、毎週のようにセールの通知が届く光景は、私たちにとってすっかりお馴染みのものとなっています。
季節が変わるたびに気軽に新しい衣服を購入できるという利点や、成長の早い子どもたちに適したサイズの衣服をお手頃な価格で入手できることは、家計にとても優しく、特に親たちにとっては非常にありがたいサービスです。
さらに、ファストファッションは高い品質の商品を提供し、色やサイズのバリエーションも豊富に揃っています。このような状況の中、他のブランドで類似の洋服がより高い価格設定となっているのに対し、ファストファッションは一体なぜここまで安価に提供できるのでしょうか？
ファストファッションのしくみ
ファストファッションの衣服が実際に生産されている国は、日本国内ではありません。主に発展途上国において、多くの労働者が安価な賃金で働くことができるため、大量生産が行われています。
どこで作られているの？
以前は多くの服飾工場が中国に集中していましたが、現在ではさらに安価な労働力を求めて、製造拠点が東南アジアへと移行しています。このように、製造コストを削減するために、カンボジアやミャンマー、バングラデシュなどの低賃金労働者が多くいる国々で衣服が生産されるようになっています。
誰が作っているの？
低賃金で働くことを強いられている人々の中には、18歳未満の子どもたちも多く含まれています。企業は、低賃金で労働力を提供できる国々で衣服を製造するため、供給される労働力の量が需要を上回っている状況です。つまり、安い賃金や劣悪な労働環境であっても、家庭の経済を支えるために働かざるを得ない人々が多数存在するのです。
衣服を作る過程には特別な技術を必要としないものも多く、教育を受けるべき年齢の子どもたちが多くの時間を働かされているという現実を無視することはできません。
どうしてこんなに安いの？
ファストファッションがここまで低価格を実現できている背景には、安価な賃金で衣服を製造することによって人件費を大幅に削減している仕組みがあります。例えば、バングラデシュにおける製造業に従事する労働者の最低賃金は、月額約12,000円とされています。これは、中国の5分の1、インドの3分の1に相当する非常に低い金額です。
日本で働いている人々にとっては、驚くべきほどの低賃金と言えるでしょう。発展途上国の中には労働組合が結成されていない国も多く、そのため低賃金での労働を強いられたり、劣悪な労働条件に甘んじざるを得ない状況に対抗できないのが大きな問題となっています。
ポロシャツ１枚ができるまで
約1,000円のポロシャツを製造するために、どれほどのコストがかかり、誰に支払われるのかを詳しく見ていきましょう。
コスト
ポロシャツの生地に使用される糸や布、針、ボタンなどの原材料費は約300円です。その後、下請け工場の利益として約30円が発生します。さらに、輸送費などを含めると、約60円がかかることになります。
労働者の賃金
このようなコストの中から、労働者に支払われる金額は、なんと約10円に過ぎません。これはポロシャツ1枚の価格のわずか1％に相当する非常に少ない金額です。
メーカーの利益
コストや人件費を引いた残りの約600円が、メーカーの利益となります。これはポロシャツ1枚の価格の約60％を占めることになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか？ 労働者がどのように搾取され、メーカーがどれだけの利益を上げているのか、少しでも理解していただけたのではないかと思います。
ファストファッションの製造過程では、労働問題が大きな課題として広く認識されています。子どもたちが働かざるを得ない背景には、貧しい家庭環境があり、家計を支えるために教育を受ける権利が侵害されているにもかかわらず、劣悪な環境で働かなければならないという厳しい実情が存在しています。
18歳未満の子どもが働くことに関しては、各国の法律で制限されているはずですが、その規制すらも無視されている現状があります。また、衣服を製造する過程で殺虫剤や鉛系の染料などが使用されることも多く、長時間働く中で労働者は多くの化学物質に曝露され、健康に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
残念ながら、日本のように労働時間が厳格に管理され、労働者の健康が守られている国は少ないのが実際のところです。
皆さんは「強制労働」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。例えば、洋服を作る工場では、朝から夜の10時まで働き続け、休み時間は昼休みのみという厳しい状況が存在する場合もあります。過去には、バングラデシュの縫製工場で火災が発生し、112人の尊い命が失われ、200人以上が負傷したという悲劇もありました。その際、労働者を強制的に働かせるために、外から鍵がかけられていたため、火災が発生した時に逃げることができなかったのです。
このような厳しい環境の中で生産され、流行に流されて安価で大量に供給されるのがファストファッションです。何も知らずにその安さだけで購入することが、実際には非常に恐ろしいことだとは思いませんか？
現在では、途上国での労働条件を改善するために、衣料業界の実態を広く伝える活動が行われています。さらに、衣料メーカーの中には下請け業者のリストを公開し、労働者の生活を考慮して改善活動に取り組む企業も増えてきています。
私たち消費者も、この洋服がなぜこれほど安価であるのか、どのような環境で作られているのかをしっかりと考慮し、賢く購入先を選ぶことが大切ではないかと思います。
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