日本における一般的なライフスタイルの一つとして、結婚を経て子どもを持ち、30歳前後でマイホームを購入するというモデルケースが広く認識されています。この傾向は、特にバブル経済を体験した60歳以上の世代にとっては、非常に自然な選択肢と映っていることでしょう。彼らにとって、マイホームを所有することは当たり前のことであり、賃貸住宅に長期間住み続けることには強い違和感を感じる方が多いかもしれません。
その子ども世代にあたるのが、現在20代後半から30代の人々であり、昭和末期から平成初期にかけて生まれた世代です。私自身もその世代に属し、結婚をし、子どもを持つ中で、親からは次のような言葉をかけられました。
「結婚して子どもが生まれたから、次はマイホームを手に入れる時期だね。いつ頃建てるのかしら?」
私と夫は、実際にはマイホームを持つという強い願望を抱いているわけではありませんでした。むしろ、賃貸住宅に住み続ける選択肢も悪くないのではないかと考えるようになりました。そのため、親世代の持ち家文化が根強いことに改めて気づかされました。
マイホームは、多くの人々にとって憧れの象徴であり、私たち夫婦ももし十分な資金があればマイホームを購入する選択肢を考慮に入れるかもしれません。しかし、現在の社会では給与の上昇が見込まれず、終身雇用の崩壊も現実味を帯びています。頭金なしでフルローンを組み、30年以上にわたって住宅ローンの返済に追われる生活を強いられ、退職金を使ってようやくローンを完済するというケースも少なくありません。このような状況を鑑みると、マイホーム購入には慎重さが求められます。
そこで、賃貸派の私たちがマイホームを購入しない方が良い理由、あるいは避けるべき理由をいくつか挙げてみたいと思います。
持ち家の資産価値
持ち家を購入した方や、不動産業者の営業担当者からよく耳にする言葉があります。
「賃貸に家賃を支払い続けても、自分のものにはならないから無駄だ」
「持ち家を手に入れれば、ローンの返済が終了した後は自分の資産になる」
「家賃とローン返済額が同じであれば、持ち家の方が得だ」
このような主張は一見すると非常に理にかなったものであるように思えますが、実際のところはどうなのでしょうか。30年から35年をかけてローンを完済して得られる持ち家は、築30年以上が経過することが多く、資産価値はほとんどないのが現実です。
建物には法定耐用年数が設定されており、基本的にはこの耐用年数を超えた建物はその価値がゼロに近いとされています。ただし、土地に関しては減価償却されることがないため、その価値は残り続けます。
要するに、「持ち家を購入すれば、ローンを完済した後は自分の資産になる」というのは一見正しいのですが、実際にはその資産の価値がゼロに近いという現実に直面することになります。結果として、持ち家を持つことによる明確なメリットがないことがわかります。
ランニングコストの問題
持ち家には、賃貸に比べて高額なランニングコストが発生します。
「家賃とローン返済額が同じなら、持ち家の方が得だ」という意見は、一見すると正しいように思えますが、持ち家に伴うコストがローン返済額だけで済む場合に限られます。
実際には、持ち家にかかるコストには次のようなものが含まれます。
・ローンを組む際に発生する事務手数料や、ローン返済に伴う金利、不動産の登記に関連する手数料
・不動産取得税や固定資産税などの税金
・建物の経年劣化に伴う定期的な修繕やメンテナンスにかかる費用
これらのコストは、ローンの額や家庭ごとの状況によって異なりますが、概ね500万円程度はかかると見込まれます。さらに、ローン金利を加味すれば、合計で1000万円以上の負担になる可能性もあるのです。
ローン返済計画の問題
日常生活を考慮し、毎月の返済額を抑えつつ、ボーナスや退職金を活用して一括繰り上げ返済を目指す方も多いことでしょう。
「定年退職後に退職金を受け取り、その資金でローンを一括返済して、ようやく持ち家が自分のものになった。これでローンの支払いも無くなり、自由に老後を楽しめる!」
そんな理想的な未来を描いている方もいるかもしれませんが、実際には以下のような問題が存在します。
・退職金を使うことで老後の生活資金が減少し、場合によっては資金が枯渇するリスクがある
・ローンを完済した後も、税金や建物の修繕費用などのランニングコストは依然として発生し続ける
このように、ローンを完済した後も人生は続くため、持ち家のローン返済だけに注力し、その他の生活資金や将来の計画を軽視することは避けるべきです。
まとめ
以上の理由から、私はマイホームを購入するべきではない、あるいは購入を控えた方が良いと考えています。
その根本的な理由は、経済的な問題に行き着くからです。
「自分の自由にできる空間を持ちたい」
「家族で快適に過ごせる場所を築きたい」
という持ち家を持ちたいという気持ちや憧れはよく理解できますし、私自身もそのような感情を抱いています。
しかし、そのような気持ちを上回るほど、金銭的な問題が大きな影響を及ぼしているのです。
持ち家を持つことで経済的に困窮し、
・家族生活が成り立たなくなる
・過度な節約によるストレスを抱えることになる
・子どもの進学資金が不足し、進学を断念する事態に至る
・老後の生活が見えず、生涯働き続けざるを得なくなる
といった問題に直面する未来が私には想像できます。
持ち家を持つことによって、自分自身や家族の人生の選択肢が狭まる可能性があることをしっかりと認識し、その上で日々の生活を送ることが重要だと考えています。
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