あなたは、野菜を買う理由について考えたことがありますか?
美味しさを求めるためでしょうか、それとも健康を意識した結果の選択なのでしょうか?
実際には、私たちが想像している以上に、栄養価の低い野菜が流通していることをご存知でしょうか。
もし健康を大切に考えているのであれば、ぜひ一度、野菜の購入方法を見直すことをお勧めします。
さらに、種についての知識を深めて、自宅での栽培を始めるのも非常に素晴らしい選択肢かもしれません。
種子から見る野菜の種類
野菜には多様な種類の種が存在することをご存知ですか?
ガーデニングを行ったことがある人はそのことを実感しているかもしれませんが、日常的に野菜を買って食べるだけの方々には、種に対する知識があまりないことが多いのではないでしょうか。
ここでは、野菜の多様性について、種子の観点から詳しく説明していきます。
F1種とは
F1とは、First Filial Generationの略称で、第一代目を指す言葉です。
このF1種は、特に同じ形状で均一なサイズの野菜が迅速に育つため、「1代目」と呼ばれています。
一般的には、雑種第一代やハイブリッドと呼ぶこともあります。
引用:翔栄ファーム
スーパーマーケットで見かける野菜は、形が整っており、見た目も美しく、傷もほとんど見られません。また、サイズも均一であることが求められています。
例えば、きゅうりは少しでも曲がっていると販売対象外となってしまうのが、現在の日本の野菜流通の実情です。
海外に目を向けると、さまざまな形や大きさの野菜を見ることができ、長期間海外に住んでいた方は日本の野菜売り場の不自然さに気づくかもしれません。
実際、日本市場で販売されている野菜の約90%はF1種であると言われています。
2代目以降は形が不揃いになってしまうため、農家は毎年新しい種を購入して栽培を行う必要があるのです。自家採取も可能ではありますが、形がバラバラだと商品価値が低下してしまうのです。
農家にとってF1種にはいくつかの利点があります。
発芽と生育が均一になりやすい 病気に対する耐性が高い 一般消費者に受け入れられやすく、苦味やクセの少ない野菜を生産できる 生育が旺盛なため、多くの生産量が期待できる 種を自家採取する手間が不要なため、全ての作物を収穫に回すことができる |
しかし、農家にとってのデメリットとして、毎年新しい種や化学肥料、農薬を購入しなければならない点が挙げられます。
固定種とは
固定種とは、長い時間をかけて繰り返し栽培されてきた品種を指します。
中には800年以上も栽培が続けられている品種も存在します。
この固定種は、その性質が安定しているため、収穫した種を翌年再び撒くことで、同じ特性の野菜を再度収穫することが可能です。
性質は一定であっても、野菜の形やサイズは異なり、それぞれの成長速度も異なるため、少しずつ収穫を楽しむことができます。
また、化学肥料などが存在しなかった時代から育てられてきた固定種は、自然環境を活用して育てることができるため、有機農業にも適しています。
在来種
在来種は、固定種の一部であり、特定の土地の風土に合わせて栽培されてきたものを指します。
群馬県の下仁田ネギや、京都の伝統的な千枚漬けに使われる聖護院大根などがこの在来種に含まれます。
西洋では、伝統野菜はエアルーム(heirloom)野菜として知られています。エアルームは家宝や資産を意味し、オーガニック野菜よりも人気が高い傾向にあります。
消費者にとっては多くのメリットがありますが、農家が安定した収入を得るためには工夫が必要で、そのためにF1種を導入する農家が増えているのです。
固定種を育てる農家が集まる環境であれば問題は少ないですが、近隣にF1種を育てている農家がいる場合、F1種の優位性が強まり、固定種の種の収穫に影響を及ぼすことがあります。
また、固定種は規格外の野菜になりやすいため、F1種を選ぶ農家が増加する傾向も見られます。
規格外の野菜については、次の章で詳しく触れます。
遺伝子組み換え作物とは
F1種の野菜は、人工的におしべとめしべを掛け合わせて作られた作物の種であり、実際には小学生でも簡単に行える手法です。どの野菜とどの野菜を受粉させるかを研究するだけで済みます。
一方で、遺伝子組み換えは遺伝子そのものを操作することを意味し、専門的な研究室の環境でなければ実施できません。この技術は難易度が高く、特許の問題も絡んでくるため、遺伝子組み換え食品は翌年以降も同様の種ができる特徴があります。これによって、自家採取が行われると問題が生じるため、種子法などで管理されています。
ゲノム編集野菜とは
こちらは、最近進展している新たな研究技術です。遺伝子組み換えとは異なり、その作物が本来持っている遺伝子情報を操作して製造されます。遺伝子組み換えは植物と動物の遺伝子を組み合わせることがありますが、ゲノム編集ではその作物自体の遺伝子情報を変更する手法です。この技術は、遺伝子組み換え食品の危険性が懸念される中での代替手段として開発されました。日本では、ゲノム編集されたトマトがすでにクラウドファンディングを通じて販売された事例もあります。
F1種のデメリット
農家にとっては多くの利点があるF1種の野菜ですが、一般家庭にとっては残念ながら好ましくない事実も存在しています。
F1種は栄養価が乏しい
1950年代にはF1種が普及していなかった時代のほうれん草(固定種)の栄養素と、最近のほうれん草の栄養価を比較してみましょう。
ほうれん草100gあたりの栄養素は以下の通りです:
ビタミンC | 鉄分 | |
1950年 | 150mg | 13.0mg |
1982年 | 65mg | 3.7mg |
2000年 | 35mg | 2.7mg |
1950年代と比較すると、栄養価は約5分の1にまで減少しています。
また、伝統野菜として知られる在来種は、特に京都の伝統野菜において高い栄養価を誇っています。
堀川ごぼうの食物繊維は2倍以上、
辛味大根のミネラルは2~3倍、
鹿ヶ谷かぼちゃやえびいもの不飽和脂肪酸は4倍以上の含有量を持っています。
ただし、伝統野菜であっても、F1種を普及させようとする動きがあるため、全てが在来種というわけではありません。
日本の種の自給率に影響
日本の種の自給率は非常に低く、
90%以上が海外から購入されています。
海外からの調達は、食糧危機に直面するリスクを高める要因となります。
世界情勢が不安定になると、野菜の価格が急騰することもあります。
自家採取が可能な固定種の種を使って栽培することで、翌年以降の不安を軽減することができるのです。
日常生活が不安定になることもあるかもしれませんが、将来的な心配を抱えるのは良くないことです。
規格外の野菜の廃棄
F1種が市場に出回る一方で、規格外であるために廃棄される野菜も多く存在していることをご存知でしょうか。
規格外の野菜とは、形が不揃いであったり、色が薄かったりして流通から外れる野菜のことを指します。
出荷に関する規格は、都道府県やJAによって詳細に設定されています。
年間に廃棄される野菜の正確なデータは公表されていませんが、2021年産の春野菜では約13万トン、夏野菜では約31万トンが廃棄されています。
食糧危機が進行中で昆虫食が推奨されている一方で、これほど多くの規格外野菜が廃棄されているというのは驚くべき事実です。
規格外の野菜を購入できるオンラインショップも存在しますので、興味がある方は「規格外野菜」と検索してみてください。
F1種を避けて野菜を摂取する方法
日本の農業において、ほぼF1種とされる野菜には以下のようなものがあります。
トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、メロンなどの果菜類 根菜類ではダイコンやニンジン、 葉菜類ではハクサイ、ホウレンソウ、キャベツなどが含まれます。 |
昔のトマトに比べて、現在のトマトは酸っぱくなく、甘みが強くなっています。
ニンジンやピーマンも、以前よりも食べやすくなっています。
また、大根も真っ白で、形と長さが均一です。
とはいえ、全ての野菜がF1種というわけではありません。
豆類やキク科の野菜にはF1種が少ない傾向があります。
マメ科・・・大豆、黒豆、茶豆、小豆、そらまめ、落花生、スナップエンドウ キク科・・・レタス、春菊、ゴボウなど さらに、ハーブ類も含まれます。 ハーブ・・・青シソ、赤しそ、バジル、パセリ、ミントなど |
また、日本には自生する野菜も存在しています。
自然薯、オカヒジキ、ウド、セリ、三つ葉、みょうが、山椒などがその例です。
歴史の深い野菜でありながら、現在ではあまり目にしないものとして、まこもたけや菊芋もあります。
実は、これらの野菜は生命力や栄養素が非常に高いのです。
どの野菜がF1種に該当するのかを覚えておき、そうした野菜を別のルートで購入することを検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
F1種がすべて悪いわけではありませんが、野菜売り場で見かける野菜が当たり前という認識を持たず、なぜ美しい野菜が並んでいるのかを理解していただければと思います。
栄養面を重視するのであれば、形がきれいで皮がむきやすいF1種よりも、多少不格好でも味が濃厚な固定種の購入をお勧めします。
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