最近、コオロギを食材として利用することに関する話題が多く取り上げられるようになりました。
「エコで健康に良い」と感じている方々も少なくないのではないでしょうか。大手企業がコオロギ食を取り扱うようになり、興味を持って実際に試してみたいと思う方も増えているかもしれません。しかし、実際に商品を購入する前に、その食品が本当に良いものであるのかどうかをしっかりと把握しておくことが重要です。
そこで、あまり一般的に普及していないコオロギ食に関する情報を整理し、詳しくご紹介します。
コオロギ食はどんなもの？
コオロギ食には具体的にどのような製品が存在するのでしょうか。市販されている商品について、また海外でのコオロギ食の事例も調査してみました。写真を交えながら、コオロギ食の全体像を詳しくまとめていきます。
コオロギとは
コオロギは約45日間で成虫に成長し、雑食性の昆虫です。
英語では「Cricket」と呼ばれています。
食用として広く利用されているコオロギには、主に以下の3種類が存在します。
| フタホシコオロギ：日本の沖縄にも生息しています。 ヨーロッパイエコオロギ：タンパク質が豊富で、食用コオロギの主流です。 タイワンオオコオロギ：脂肪分が多く、パウダーとして使用するには適していません。 |
コオロギが最も快適に育つための環境温度は、25度から30度とされています。
売られている商品
無印良品のコオロギせんべいやコオロギチョコは、多くの人に知られていますよね。
さらに、コンビニのファミリーマートでもコオロギを使用した製品が販売され、コオロギ食がますます身近な存在になってきています。
無印良品やファミリーマートに限らず、実際には多くの企業が昆虫食の普及に努めています。
引用：市況かぶ全力２階建
海外事例
日本におけるコオロギ食に対するイメージと、海外でのそれは果たして同じなのでしょうか。
海外でのコオロギ食の事例もいくつか調査してみました。
タイ
タイでは、世界に先駆けて1990年代後半からコオロギの養殖が開始されました。2019年の時点で、すでに20,000戸以上の農家がコオロギを育てており、その中には大きな利益を上げて、コオロギ御殿を建てた人もいると言われています。
ベトナム
ホーチミン市内には、コオロギを使ったソース和えやコオロギサラダを提供する飲食店が数軒存在します。
引用：ベトナムスケッチ
フィンランド
フィンランドでは、2017年に昆虫食が正式に認可されて以来、さまざまな企業がコオロギを使った食品を販売しています。
美しいパッケージに包まれたチョコレートコーティングされたコオロギも人気です。
コオロギ食が良いって本当?
コオロギ食は環境に優しく、栄養価が高いとされています。
果たして本当にエコなのか、またたんぱく質が豊富であるのか、じっくりと考えてみましょう。
エコかどうか?
コオロギ食は栄養価が高いだけでなく、環境に対しても優しいとされることが多いですが、実際には本当にエコなのでしょうか？
温度管理
コオロギは環境への負荷が少ないとされていますが、その実態はどうなのでしょうか。
コオロギが育つためには、25度から30度の適切な温度が必要であり、日本の年間平均気温は、沖縄でも23.1度、東京などの首都圏では約16度前後です。つまり、日本におけるコオロギの養殖には年間を通じて温度管理が不可欠であるということになります。
えさ代
コオロギは雑食性であり、与える餌によって味が変わります。安定した味のコオロギを育てるためには、同じような餌を与え続ける必要がありますが、もし餌の栄養が不足すると、コオロギ同士で共食いを始めることがあるのです。美味しいコオロギを生産しつつ、たんぱく質を維持するのは簡単ではないかもしれません。
水
コオロギには水が不可欠ですが、同時に湿気には非常に敏感です。清潔な水を準備しつつ、乾燥した空気を保つことが求められます。
たんぱく質が本当に多いのか
コオロギのタンパク質含量が注目されていますが、単純に比較することは適切ではないと考えています。
一般的に、100gあたりの含量として示されますが、コオロギパウダーの100gというのはかなりの量です。
仮に美味しいとしても、パウダーを一度に100gも食べることは難しいでしょう。冷凍コオロギで数えると、100gは約250匹程度ですが、サイズによっては乾燥コオロギにすると1,000匹近くになることもあります。
牛肉の100gを食べる際は、通常100g以上を食べますよね。このように、一度に数gしか取れない食材と比較するのは適切なのでしょうか。
コオロギパウダーは結束力が低いため、小麦粉と混ぜる際には20％以下が推奨されています。
また、タンパク質の話をする際には大豆も挙げられますが、食糧危機の観点から比較対象に大豆を含めないのではないかという疑問もあります。
コオロギ食の危険性
2018年に欧州食品安全機関は、新食品としてヨーロッパイエコオロギに関するリスクプロファイルを発表しています。
| 全体的に好気性細菌数が多いことが指摘されています。 加熱処理後も芽胞形成菌が生存していることが確認されています。 ※芽胞形成菌とは、ボツリヌス菌などのように、加熱しても死滅しない菌を指します。 アレルギー源に関する問題もあり、 重金属（カドミウム）が生物濃縮されるリスクがあることが指摘されています。 |
このリスクプロファイル以外にも、いくつかの懸念点があるため、以下に紹介します。
妊婦はだめ
こちらは、中国の漢方の教科書とも言われる「本草綱目」に記載されています。
妊婦は禁忌と明記されており、妊娠中の方が栄養価の高いものを摂取しようとする際には、特に注意が必要です。
余計な添加物が入っている
無印良品のコオロギせんべいやコオロギチョコを例に挙げてみましょう。
コオロギせんべいにはアミノ酸が、コオロギチョコには香料が含まれています。
ファミリーマートのプロテインバーやクッキーにも香料がしっかりと使用されています。
健康に気を使っている方は、アミノ酸や香料にも注意を払っていることでしょう。コオロギパウダーを利用した製品には、避けたい原材料が含まれていることが少なくありません。コオロギ自体が美味しいものであれば、わざわざ添加物を使う必要はないのではないでしょうか。
栄養補給を目的とするコオロギパウダーに、添加物がたくさん含まれているのでは本末転倒のように感じます。
アレルギーの原因、トロポミオシン
日本の食品表示法では、特定原材料由来の添加物を含む加工食品には、食物アレルギー表示が求められています。特に重篤度や症例数が多い7品目については、表示が義務付けられています。
この7品目は、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生（ピーナッツ）
えびやカニには、トロポミオシンという物質がアレルゲンとして含まれていますが、コオロギにもトロポミオシンが存在しています！
甲殻類アレルギーをお持ちの方は、コオロギを食べる際に特に注意が必要であるとされますが、えびやカニに対してアレルギーを発症する方も多く、コオロギを食べることでそのリスクが増える可能性があるかもしれません。
輸入物の飼育環境
こちらは、タイのコオロギ養殖所の一例ですが、日本の工場で管理されている養殖とは異なり、ビニールハウスのような外部から出入りできる構造に見受けられます。
サーキュラーフード
徳島大学発のベンチャー企業であるGRYLLUSは、食品廃棄物を餌としてコオロギを養殖することに成功したとされています。
この会社のコオロギパウダーは無印良品でも使用されています。
廃棄される食品を再利用して循環させるという発想は一見素晴らしいですが、食品廃棄物の中には添加物が多く含まれる、または賞味期限切れの食品が混ざっている可能性があるのではないかと心配されます。本当に安全なのでしょうか？
具体的にどのような食品廃棄物を餌として使用しているのか、詳細な情報が求められますね。
引用：CNET
ゲノム編集
ゲノム編集を施したコオロギに関する研究も行われており、これはコオロギを白くし、使いやすい食材にするための取り組みです。
ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いを簡単に説明します。
トマトを例に取ります。
引用：産総研マガジン
遺伝子組み換えは、他の生物の遺伝子を導入して行うもので、その結果として見た目は同じでも自然界には存在しない新しい植物が誕生することになります。
一方で、ゲノム編集は遺伝子の一部を切り取る技術であり、その結果として自然界にも存在し得る植物が生まれることになります。
自然界に存在する可能性のある植物ということは、一体どういうことでしょうか？
トマトの実用化は進行中ですし、魚においても実用化が行われていますが、それがコオロギにおいても安全であると考えられるのか、注意が必要です。
ゲノム編集は遺伝子組み換えの代替手段として2000年代初頭から始まった新しい技術ですが、コオロギ食への実用化はまだ進んでいないものの、いつの間にか利用されている可能性もあるため、注意が必要な情報です。
まとめ
コオロギ食に関する情報は、現在も発展途上にあります。今回、気になる点をいくつかまとめてみました。新しい食品であるために、明確な答えが出ていないことも多く、購入するかどうかは最終的には自己責任となります。自分自身の食生活にどのように取り入れたいか、一度じっくり考える良い機会になったのではないでしょうか。
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