健康診断を受けた際に、「塩分を減らすことを心がけましょう」というアドバイスを受けたことはありませんか?確かに、塩分を過剰に摂取することは、高血圧を引き起こす要因となることが知られています。
塩分を減らすための対策として、醤油の利用量を控えることは効果的な方法の一つです。しかし、濃い味付けに慣れた舌は、薄味を物足りなく感じてしまうことが多いのです。そこで「うすくち醤油」を試してみようと考える方もいるでしょう。しかし、うすくちという言葉の響きは、一般的に通常の醤油よりも塩分が少ないと感じさせるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか?
「こいくち」と「うすくち」の違いとは
こいくち醤油は、日本全国で出荷される醤油の約80%を占める、非常に一般的なタイプの醤油です。一方で、うすくち醤油は全体の約10%の出荷量で、主に関西地方で広く利用されています。
こいくち醤油
こいくち醤油は「濃口」とも表記され、濃い褐色で親しみやすい味わいを持つ醤油です。これからは「濃口醤油」と呼ぶことにします。原材料には、大豆、塩、小麦の3つが使用されています。火を通す調理にも、また卓上で使う調味料としても幅広く利用できる、非常に万能な調味料です。
うすくち醤油
うすくち醤油は「薄口」または「淡口」とも表記され、濃口醤油に比べて色が淡く、香りも控えめです。ここからは「淡口醤油」としてご紹介します。原材料は大豆、塩、小麦に加え、味をまろやかにするために米が使用されています。淡い色合いは素材の風味を引き立てるため、主に料理用として活用されています。
醤油の塩分濃度を比較
ここで、濃口醤油と淡口醤油の塩分量を比較してみましょう。参考として「減塩醤油」も加えて比較を行います。
塩分濃度 | 備考 | |
濃口醤油 | 16% | 醤油の一般的な塩分濃度です。 |
淡口醤油 | 18% | 色や香りが強くなりすぎないように、相対的に塩分が多く設定されています。 |
減塩醤油 | 9% | 醤油から塩分を約50%取り除いた製品です。 |
「うすくち」という言葉の響きに反して、淡口醤油は実際には濃口醤油よりも塩分濃度が高いことが確認できました。これは、塩分が薄いのではなく、色が淡いという意味で「うすくち」と呼ばれているのです。つまり、減塩対策として淡口醤油を選ぶのは避けるべきということが分かります。
塩分を減らすなら減塩醤油が最適
ここで、「減塩醤油」という新たな選択肢が登場しますが、これは一体どのようなものなのでしょうか。
減塩醤油の表示には決まりがある
「減塩醤油」としての表示には厳格な基準があります。具体的には「しょうゆ100g中、食塩量9g以下(ナトリウムとして3,550mg以下)」の製品のみが、この表示を使用することができるのです。※注1 つまり、減塩醤油と表示されている場合、その塩分濃度は9%以下であることが保証されています。これは非常に分かりやすいポイントですね。減塩醤油は、塩分を気にする方々にとって非常に頼もしい存在となるでしょう。
※注1)参考:キッコーマン株式会社 商品情報サイト「商品情報」キッコーマンのしょうゆ 減塩しょうゆ
計量して使うこと
減塩醤油を使用する際には、通常の醤油に比べて塩分が少ないため、味が薄いと感じることがあります。しかし、「減塩だから大丈夫」と思ってかけすぎてしまうと、その効果が大きく減少してしまいます。濃口醤油や淡口醤油の代わりに使用する際には、必ず計量して使用するように心掛けましょう、これによって思わぬ塩分過剰摂取を防ぐことができます。
調理酒の塩分に注意
おいしい料理を作る上で欠かせないのが調理酒です。肉を酒蒸しにしたり、煮物や汁物に加えたりすることが多い調味料のひとつですが、実はこの調理酒にも2~3%の塩分が含まれています。せっかく減塩醤油を使うのであれば、調理酒の塩分についても考慮したいところです。減塩を意識している方は、食塩不使用の調理酒を選ぶことをお勧めします。
上手な減塩のコツ
濃い味付けに慣れてしまうと、薄味の料理が物足りなく感じることが多くなります。減塩が重要であることは理解していても、食事が味気なくなってしまうのは残念なことです。塩分を減らしつつ、豊かな味わいの食卓を実現するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
柑橘類の力を借りる
焼肉は、たっぷりとつけだれを絡めて食べると美味しいですが、これでは塩分を多く摂取することになってしまいます。そこで、つけだれをレモン汁で薄めて使うというのはいかがでしょう。また、お肉の3切れに1切れはサンチュで巻いて、レモン汁をかけて食べると、さっぱりとした味わいが楽しめます。
焼き魚やお刺身も美味しいですが、醤油をかけたりつけたりすることが一般的です。しかしここでも、醤油の代わりにレモンやかぼすなどの柑橘類をひと搾り加えることで、さわやかな酸味がプラスされ、新たな美味しさを発見できるかもしれません。
香味野菜の力を借りる
お肉や魚のソテーや炒め物には、香味野菜を活用することがおすすめです。和風であれば、しそ、みょうが、ねぎやすりごまなどが良いでしょう。洋風であれば、バジルやタイム、オレガノといったハーブ類がマッチします。しょうがやにんにくも、どちらの料理にも合うので、いろいろな組み合わせを試しながら、風味豊かな食卓を楽しんでみてください。
卓上醤油を出汁で割る
食事の際に料理に醤油をかける習慣がある方は、これを見直すことが重要です。しかし、習慣を変えるのは簡単ではありません。そこで、まずは卓上醤油を見直してみませんか?
濃い目に取った出汁で醤油を割り、卓上の容器に入れておくと良いでしょう。出汁の風味が、塩分の少なさをうまく補ってくれます。ただし、この方法は日持ちしないため、こまめに作る必要があります。したがって、家族の中で卓上醤油をかける習慣がある方にお願いして作ってもらうと良いでしょう。
減塩対策にはうすくち醤油を買ってはいけない
ここまで「うすくち」醤油の特徴や、減塩醤油、さらに減塩のための工夫について見てきました。1日に摂取する塩分量を適正に保つことは、高血圧の予防に非常に効果的です。減塩対策を行う際には、淡口醤油ではなく、ぜひ減塩醤油を選ぶようにしましょう。そして、調味料に頼りすぎない工夫をすることも重要です。「美味しい減塩」を楽しみながら、健康で楽しい日々を送ってください。
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