給料の上昇が見込めず、退職金にも期待が持てない状況が続く中、さらに老後の生活に対する不安感が増しているというのは、現代の多くの人々に共通する悩みの一つだと私は感じています。このような経済的なストレスは、私たちの生活全般に影響を及ぼし、将来に対しての不安を増大させます。
昔は「終身雇用制度のもとで長年勤め上げ、退職金を手に入れて住宅ローンを完済し、年金で余裕のある老後を過ごす」という理想的なライフスタイルが一般的でした。しかし、現代においてはその実現が非常に難しくなってきていることは否めません。このため、多くの人がこうした経済的な問題を解決する方法として、貯金だけに依存するのではなく、投資や資産運用、すなわち資産形成を真剣に検討するようになっているのではないでしょうか。
そこで、資産運用を行う際に特に避けるべき金融商品として「外貨建て保険」を取り上げたいと思います。
外貨建て保険とは
外貨建て保険とは、日本円ではなく、外貨(例えばドルやユーロなど)で保険を契約し、保障を受けると同時に一定の期間が経過した後に利益を得ることができる金融商品の一つです。この商品の特徴として、
・日本円ではなく外貨で契約をすることにより、リスクヘッジの効果が期待できる
・通常の預金利息に比べてより高い利回りが期待できる
という利点が挙げられます。そのため、多くの人々が外貨建て保険を選ぶ傾向にあります。
しかし、この外貨建て保険にはいくつかの潜在的なデメリットが存在します。
保障部分にかかる費用が存在する
一般的な外貨建て保険は、主に以下の2つの部分から構成されています。
・死亡保障などの保障部分
・外国債券などの運用部分
これらの各部分にかかる費用の合計が、実際に支払う保険料にそのまま反映されています。「保障部分+運用部分=保険料」という関係が成り立つのです。
ここで考慮すべき点は、保障部分と運用部分を明確に分けて理解する必要があるということです。資産形成を目的としている商品であるにもかかわらず、保障部分が存在するということは、支払った保険料の全額が運用部分に充てられているわけではないということを意味しています。具体的には、保険料は保障部分と運用部分に分かれており、その比率は商品ごとに異なるのです。
保障内容にもよりますが、保障部分については掛け捨ての生命保険や医療保険に別途加入することで、全体的な費用を抑えられる可能性が高いと考えられます。
為替の影響が大きい
外貨建て保険の運用結果は、契約時の為替レートの動向、すなわち円安か円高かによって大きく変わることがあります。円安であれば期待以上の運用結果が得られる一方で、予想外の円高が進行すると、たとえ利回りがプラスであっても、その影響で運用結果がマイナスに転じるリスクが存在します。
為替は日々変動しており、その理由は主に購入される通貨の量に基づいています。具体的には、円とドルの取引量が影響し、「円ドル」であれば円高に進むことがあるのです。つまり、個人が扱う通貨の量よりも、銀行や証券会社などの大規模な機関投資家が取り扱う通貨の量が遥かに大きく、影響力も強いのです。このため、私たち個人が持っていない情報を駆使し、日常的に通貨の売買を行っている機関投資家に対抗するのは非常に難しく、為替リスクは常に私たちの身近に存在しています。
運用利回りが低く、手数料が高い
外貨建て保険の運用部分に利用される金融商品は主に外国債券、例えば米国債などであり、一般的には年利回りが1%前後とされます。単純な計算で考えると、(実際の運用結果は異なる場合がありますが)
1%×10年間=10%となり、10年間で10%の利回りが期待できるということになります。つまり、100万円が10年後には110万円になるという試算です。
この数字を見て、「これは銀行に預けるよりも良い結果ではないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実際には保険会社を通じて購入する際には手数料が発生し、その影響で利回りが低下してしまうのです。
さらに、外国債券は今やオンライン証券会社を通じて個人が直接購入可能な金融商品であり、必ずしも保険会社を介する必要はありません。加えて、もし10年以上の資産形成を考える資金があるのであれば、全世界を対象としたインデックスファンドなどを活用することで、年間利回り4~5%程度を期待することができるのです。
もちろん、債券とは異なり、年間利回り4~5%が絶対に保証されるわけではありませんが、10年以上運用することで高い確率で債券を上回るリターンが見込めます。リスクをできるだけ回避したいのであれば、外国債券を個別に購入する方が賢明な選択と言えるでしょう。
まとめ
以上の理由から、資産形成の観点から外貨建て保険を避けるべきであることをお伝えしました。
「保障がついていて、資産形成もできるのであれば便利ではないか」
「銀行の預金利回りよりもマシだ」
このように考えて外貨建て保険を選ぶ方も多いかもしれません。しかし、そもそも保険商品と運用商品が明確に分かれているものを一緒にする必要があるのか、という疑問を持つことが重要かもしれません。
保障については掛け捨ての保険に加入し、運用部分は個別に債券や株式のインデックスファンドを購入する形にすることで、手数料を抑えられ、より良い運用結果を得られる可能性が高いと考えられます。
保険に関しても、特約を複数付けて一つの保険にまとめると意外に割高になることがあります。特約で補うのではなく、複数の保険に分けて契約することで、より安価で良い保障を得られる場合も多いのです。
あくまで保険は保険、運用は運用商品であるという考え方を持ち、資産形成を進めていただければと願っています。
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