最近では、メタボリックシンドローム対策の一環として、特定保健用食品、通称トクホが多数市場に登場しています。
特に、街中の自動販売機やコンビニエンスストアで目にすることができるのは、トクホとして認可された飲料です。
「特定保健用食品」という言葉を耳にすると、なんとなく健康に良さそうな印象を抱く方が多いかもしれませんが、実際にはどの程度の効能が期待できるのでしょうか。これらの飲み物は一般的に他の飲料に比べてやや高価ですので、メタボ対策としてこれを利用している方には、その効果についてしっかりと理解しておくことが重要です。
トクホとは何か?
トクホは、消費者庁によって以下のように定義されています。
“特定保健用食品は、体の生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)を行う食品です。
特定保健用食品として流通させるためには、各食品ごとにその有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得ることが求められます。(健康増進法第43条第1項)”https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/
簡単に言うと、特定の機能(働き)を持つ成分を含む食品で、健康維持を目指すものを指しています。
この認可制度に基づき、許可を希望する企業は、効果や安全性を示すデータを消費者庁に提出し、それに基づいて厳密な審査が行われます。
効果は「お腹の調子を整える」、「脂肪の吸収を抑える」、「コレステロールの吸収を抑える」、「血糖値の上昇を防ぐ」、「血圧を下げる」、「虫歯を防ぐ」などのさまざまなカテゴリーに分かれています。
トクホの飲み物について
◆黒烏龍茶
【キャッチコピー】脂肪の吸収を抑える
【認可表示】脂肪の吸収を抑えるウーロン茶重合ポリフェノールの効果により、食後の血中中性脂肪の上昇を抑えることができるため、脂肪の多い食事を好む方の食生活改善に役立ちます。
◆ヘルシア緑茶
【キャッチコピー】体脂肪が気になる方に
【認可表示】茶カテキンを豊富に含んでおり、エネルギーとして脂肪を効率的に消費しやすくするため、体脂肪が気になる方に最適な飲料です。
◆からだすこやか茶 W
【キャッチコピー】脂肪の吸収を抑え糖の吸収をおだやかにする
【認可表示】この飲料は難消化性デキストリン(食物繊維)の効果により、脂肪の吸収を抑えつつ糖の吸収を穏やかにし、血中の中性脂肪が高めで脂肪の多い食事を好む方や、食後の血糖値が気になり始めた方にとって適した飲料です。
これらの中でも、特に黒烏龍茶は自動販売機やコンビニで頻繁に見かける人気の商品です。一時期はテレビのCMも多く放送されていましたね。
「黒烏龍茶」には、1本(350ml)あたり70mgのウーロン茶重合ポリフェノールが含まれています。
サントリーによると、この成分は小腸で脂肪を分解する消化酵素であるリパーゼの働きを抑制することにより、脂肪の吸収を防ぎ、体外への排出を促進するとされています。
しかしながら、リパーゼの働きを妨げることで脂肪の吸収を減少させるこのメカニズムが、果たして健康に悪影響を及ぼさないのかという懸念も存在します。
人間が日常的に脂肪を摂取し、それがリパーゼによって分解される過程は、体の正常な生理機能の一部です。このプロセスを妨げることで、体のシステムに何らかの乱れが生じる可能性が無いとは言い切れません。
この疑問に対して、販売元であるサントリーは「3か月間飲用してもらい、安全性に問題はないと確認しているため、継続して飲むことは問題ないと判断している」と回答しています。
サントリーの研究によると、中性脂肪が100~250mg/dlの男女20人に対し、高脂肪食と一緒に「黒烏龍茶」を摂取してもらった結果、摂取前と摂取後の血中中性脂肪の増加量を測定したところ、摂取後4~5時間で非摂取に比べて約20%の減少が見られたとのことです。https://www.suntory.co.jp/softdrink/kuro-oolong/about/
ただし、この効果はわずか20%という数字に過ぎないとも考えることができます。
トクホのデメリットについて
トクホ商品に含まれる成分や効果に関する研究結果は十分ではなく、商品に記載されている効果は期待できないとする見解が、多くの医療関係者から示されています。
実際に、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019には、以下のように記載されています。(74ページ)
- ” 特定保健用食品の申請に必要な臨床試験の要件は、降圧薬のそれに比べて期間が短く、対象数が少ない。
- 特定保健用食品には降圧効果を有する成分が含まれているが、十分な降圧効果は期待できない。
- 特定保健用食品は降圧薬の代替品にはならず、降圧効果に過剰な期待を持たないように説明すべきであり、摂取については積極的に勧めない。」
<トクホ飲料に含まれる成分>
◆難消化性デキストリン・・でんぷんを加熱し、酵素で処理して得られるもので、過剰に摂取するとお腹がゆるくなったり、下痢を引き起こすことがあります。
◆アセスルファムK(カリウム)・・安全性に疑問が持たれている物質です。
アセスルファムKは2000年に使用が許可された新しい添加物で、砂糖の200倍の甘味を持っています。非常に分解されにくい物質であり、動物実験では体内でほとんど分解されずに尿や便として排出されることが示されています。
◆スクラロース・・1999年に認可された新しい甘味料です。
砂糖の600倍の甘味を持つため、ダイエット用甘味料として使用されますが、原料となるショ糖(砂糖)の3つの水酸基を塩素に置き換えて作られたもので、有機塩素化合物の一種です。有機塩素化合物は自然界にはほとんど存在せず、非常に分解されにくい特性を持っています。
人間がスクラロースを摂取した場合も体内で分解されず、細胞や遺伝子に影響を及ぼす可能性が懸念されています。妊娠したウサギに1日に体重1kgあたりスクラロースを0.7g与えた実験では、下痢などを伴う体重減少が観察され、一部では死亡例や流産も報告されています。
まとめ
現在、社会全体で「メタボ撲滅運動」が盛んに行われており、特定保健用食品=トクホの食品もさまざまな形態で展開されています。
メタボを解消したいと思い、このようなトクホ製品に頼ってしまう理由は、「飲むだけ」「食べるだけ」といった手軽さが非常に魅力的だからかもしれません。
また、トクホには条件付きトクホというカテゴリーも存在します。
これは、効果が科学的な根拠のレベルには達していないものの、一部の効果が認められる食品で、「根拠は必ずしも確率されていませんが・・」などの表示が含まれています。
特定保健用食品は、第三者機関から「摂取については積極的に勧めない」と指摘されていることもあります。
このようなトクホの商品は、メタボ対策として有効性があるとは考えにくいため、購入を避けた方が賢明かもしれません。
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