季節の変わり目や冬の訪れが近づくと、風邪を引きやすくなったり、体調を崩しやすくなることが増えることがよくあります。特に、その兆候として現れやすいのが喉のイガイガ感や、何となく喉に違和感があるといった症状です。
そんな喉のイガイガを感じた際には、これ以上悪化しないようにと考え、予防策としてイソジンうがい薬を使用してうがいをした経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
イソジンなどのうがい薬を使用することで、果たしてそのイガイガ感は改善されるのか、また風邪の予防に実際にどの程度効果があるのか、興味が湧きます。
市販のうがい薬に含まれる成分とその効果
◆ポビドンヨード 口腔内及び喉の殺菌・消毒・洗浄、口臭の除去(イソジンうがい薬)
このうがい薬には、添加物としてサッカリンナトリウム、メントール-I、エタノール、香料が含まれています。
*ポビドンヨードという有効成分は、ヨウ素を遊離させることにより、さまざまな細菌や真菌、さらにはウイルスなどの広範囲の微生物に対して迅速な殺菌・消毒効果を発揮します。
◆塩化セチルピリジニウム、グリチルリチン酸二カリウム、メントール-I、チョウジ油 口腔内及び喉の殺菌・消毒・洗浄、口臭の除去 (ルルうがい薬)
こちらのうがい薬にも、添加物としてユーカリ油、アルコール、香料が含まれています。
*有効成分として塩化セチルピリジニウムとグリチルリチン酸二カリウムがあり、どちらも強力な殺菌作用を持っています。特に塩化セチルピリジニウムは、ブドウ球菌などに対して迅速に効果を発揮するため、ウェットティッシュやハンドクリームなどでも幅広く使用されています。
うがい薬の風邪予防に関する根拠
結論として、水でのうがいが実際に十分な効果を示すことが、追跡調査によって確認されています。
京都大学の研究グループが実施した追跡調査では、2002年から2003年の冬に全国から387名のボランティアを集め、「水うがい群」「ヨード液うがい(イソジンうがい)群」「うがいをしない群」の3つに分け、2か月間にわたり風邪の発症状況を追跡しました。
その結果、「水うがい群」は、うがいをしない群と比較して風邪の発症が40%も低下したのに対し、「ヨード液うがい群」はわずか12%の低下にとどまりました。
このことから、ポビドンヨードを含むイソジンうがい薬の効果はほとんどなく、むしろ水でうがいを行った方が風邪の予防に効果的であると言えるでしょう。
また、風邪などから私たちの体を守っているのは、身体に元々備わっている「免疫」です。この「免疫」という言葉は、多くの人が一度は耳にしたことがあるでしょう。免疫は、私たちの身体を外的な脅威から守るための防衛システムのような役割を果たしています。第一の防衛ラインは、粘膜に存在する常在菌から成り立っていますが、その粘膜は特に喉に集中しています。
つまり、風邪のウイルスが喉に侵入すると、免疫がそのウイルスと戦うためにイガイガ感や咳を引き起こします。この反応は炎症と呼ばれ、医師に診察を受けると「喉に炎症がありますね」と言われることがあるかもしれませんが、それはまさに私たちの免疫が活発に戦っている証拠なのです。
「うがい」は、通常の水やぬるま湯で行っても十分な効果が得られるというのが、医療関係者の間での一般的な考え方となっています。
イソジンで喉の細菌をすっかり除去してしまうと、喉を守る役割を果たす細菌叢までもが失われてしまうことになります。このため、京都大学の研究調査のような結果が出たのです。
そのため、うがい薬による風邪予防に関する根拠は存在しないという結論に至ります。
うがいには何を使うべきか?
昭和大学の島村忠勝名誉教授の研究によると、紅茶で1日2回うがいを行うことで、その中に含まれるカテキンがインフルエンザなどの予防に一定の効果をもたらすとされています。
ただし、これは必ずしもインフルエンザウイルスがすぐに細胞内に侵入するわけではないことを示しています。
紅茶の赤みがかった茶葉の色には、テアフラビンという成分が豊富に含まれており、その健康効果として主に以下の3つが挙げられます。
(1)血糖値の上昇を抑える
(2)インフルエンザの予防
(3)殺菌・消毒効果
さらに、緑茶にも殺菌効果があることが研究で明らかになっているため、緑茶でうがいをすることも風邪やインフルエンザの予防に役立つでしょう。
ちなみに、日本紅茶協会の情報によれば、
インフルエンザに関しては、ウイルスの種類を問わず、紅茶のテアフラビンや緑茶のカテキンがウイルス粒子を凝集させ、感染力を失わせることが確認されています。ただし、これらはあくまで予防効果であり、ウイルスが細胞内に侵入して増殖を始めた段階ではお茶の効果は期待できません。その場合には、対症療法としての薬の投与が必要となります。お茶を用いたうがいは予防には有効ですが、喉から鼻にかけて紅茶液が行き渡るような工夫が求められます。
とのことです。
まとめ
インフルエンザが流行する時期や、風邪を引いている時、喉が痛む時、または体調がすぐれない時などに、イソジンうがい薬でうがいをすることが推奨されることが多いですが、ポビドンヨードを含むイソジンうがい薬は、追跡調査においてほとんど予防効果がないことが示されています。
さらに、添加物としてサッカリンナトリウムが使用されています。
これは甘味を加えるために使われている可能性がありますが、サッカリンナトリウムは動物実験において発がん性の疑いがあるとされています。
このような理由から、こうしたうがい薬は購入しない方が良いと考えられます。
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