食品添加物と聞くと、多くの人々は化学合成された人工物質を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には食品添加物の中には、植物や動物などの自然界に由来する成分から抽出されたり、微生物が発酵を助けて作られる天然由来のものも多く存在しています。

パッケージに「天然由来」と記載されていると、安心感を感じることが多いですが、実際にはその安全性について注意が必要です。
これらの添加物は、天然であるために安全だと考えられがちですが、実際には必ずしもそうではありません。天然由来の添加物の中には、人体にとって有害な影響をもたらす可能性があるものや、倫理的に問題を抱えるものも存在しているのです。
この記事では、天然由来の添加物について詳しく解説し、その特性や注意点を考察します。
天然由来の添加物の例
天然由来の添加物は、さまざまな食品に幅広く利用されており、ここではその中から代表的な3つの例を詳しく紹介します。
光沢剤
カルナウバロウやシェラックなど、昆虫由来の物質は、チョコレートやキャンディーなどに美しい光沢を与えるための添加物として広く利用されています。これらの成分は、食品の表面に薄い膜を形成し、水分の蒸発や湿気から食品を保護しつつ、見た目を美しく仕上げる役割を果たします。
ステビア
甘味料として広く使用されるステビアは、ステビアの葉から抽出されるステビオールグリコシドという成分です。ただし、注意が必要なのは、ステビオールグリコシドが遺伝子組み換え技術を用いて生成されることもあるため、その点についても十分な理解が求められます。
コチニール色素
赤色色素として知られるコチニール色素は、コチニールカイガラムシという虫から抽出された成分で、この添加物は食品に赤色を付与するために使用され、多くの場合、ハムやソーセージ、かにかまぼこの色付けに利用されています。
天然由来の添加物が人体に及ぼす影響
このように、天然由来の添加物が人体に与える影響は、個人差や使用量、使用頻度によって異なりますが、いくつかの問題点が指摘されています。
アレルギー
天然由来であっても、アレルギーを引き起こす可能性がある添加物も存在します。特に、コチニール色素や光沢剤といった昆虫や動物由来の添加物には注意が必要です。
コチニール色素や光沢剤に対するアレルギー反応は稀であるものの、重篤な症状を引き起こすこともあり得ます。具体的には、発疹やじんましんに加え、呼吸困難やショック症状を伴う場合もあります。

名前からは、昆虫や動物由来の添加物だと判断するのは難しいですね!動物性アレルギーがある方は特に注意が必要です。
遺伝子組み換え技術
遺伝子組み換え食品とは、植物や動物の遺伝子を人工的に操作することで、特定の性質を持たせた食品を指します。この遺伝子組み換え技術は、病気や害虫に強い作物を育てることができたり、栄養価や保存性を向上させたりすることが可能です。
しかしながら、遺伝子組み換え食品が人体に与える影響については、科学的にはまだ十分に解明されていない部分が多いのが現実です。たとえば、遺伝子組み換え食品に含まれる抗生物質耐性遺伝子や農薬成分が、微生物の耐性や人体の免疫系に悪影響を及ぼす可能性があるのではないかという懸念が広がっています。
そのため、遺伝子組み換え食品の安全性については、厚生労働省や内閣府の食品安全委員会が厳格な審査を行っています。それでも、消費者自身が情報を収集し、しっかりと判断することが求められます。
さらに、遺伝子組み換え技術を使用して作られた添加物については、表示義務がない場合も存在します。たとえば、原材料の5%以下で使用されている添加物や、重量順で上位3位以内に入らない添加物は、遺伝子組み換え由来であっても表示されないことがあります。また、発酵や合成などの工程で使用された遺伝子組み換え細菌から作られた添加物についても、表示義務が存在しないのです。
倫理的問題
コチニール色素やゼラチンといった動物由来の添加物は、動物愛護の視点から避けたいと考える人も多いかもしれません。
具体的に言えば、コチニール色素は「赤色102号」という名称で表示されることが多く、その成分が虫から作られていることは分かりにくいです。コチニール色素を得るためには、数万匹ものコチニールカイガラムシを乾燥させ、粉砕する必要があり、この過程で多くの虫が命を落とすことになります。また、コチニールカイガラムシは野生ではなく養殖されており、その飼育環境や衛生管理に問題がある可能性も否定できません。
ゼラチンは動物の骨や皮から抽出されるタンパク質であり、グミやゼリーなどに広く使用されています。動物愛護に関連する理由としては、ゼラチンの原料となる動物が殺されたり、不適切な飼育環境で飼育されていることが問題視されています。
その他の影響
天然由来の添加物には、まだ十分に研究が進んでいないものも多く存在しています。たとえば、ステビアには血圧を下げる効果があるとされているものの、そのメカニズムや副作用については未解明な部分が多いのが現状です。
具体的には、ステビアには次のようなリスクがあるとされています。
- キク科アレルギーの方はステビアに対しても反応する可能性がある。
- 性ホルモンの分泌を抑制する作用があるとの研究結果があり、生殖機能や月経周期に影響を与える可能性が指摘されている。
- 動物実験において妊娠率の低下や胎児への影響が観察されたという報告が存在する。
- 自然由来であるものの、加工過程で化学物質が使用されることがあり、残留物質や不純物が混入する恐れがある。
このように、天然由来の添加物にも人体や倫理に関するさまざまな問題が潜んでいるのです。「天然であるから安全」という考え方は非常に危険であると言えるでしょう。
天然由来の添加物を避ける方法
では、天然由来の添加物を避けるためにはどのような方法が考えられるのでしょうか?いくつかの有効な方法を提案します。
成分表示や表示基準を確認する
食品添加物は食品衛生法によって厳しく規制されており、成分表示や表示基準が定められています。
食品のパッケージや公式ウェブサイトなどで成分表示を確認し、どのような添加物が含まれているかをしっかりと把握することが重要です。また、指定添加物や既存添加物の種類や名称についても知識を持っておくと良いでしょう。
代替品を探す
天然由来の添加物を含む食品を避けたい場合は、代替品を探すことも非常に有効です。
たとえば、光沢剤やコチニール色素を使用していないキャンディーやチョコレートなどが市販されています。また、ステビアの代わりに砂糖や蜂蜜などの自然な甘味料を使うことも一つの選択肢です。
自分で作る
最も確実な方法は、自分自身で食品を作ることです。
自分で材料を選ぶことで、天然由来の添加物を含まない食品を作ることが可能になります!

手作りすることが難しいと思われるものでも、レシピサイトや動画サイトを参考にすれば作れるものがたくさんありますよ!
このように、天然由来の添加物を避けるための方法はいくつか存在します。自分に合った方法を見つけて、実践してみてください。
おわりに
この記事では、天然由来の添加物について詳細に解説しました。
最近では、天然由来の成分や添加物が多く含まれ、あたかも安全であるかのように宣伝されている商品が多く見受けられますが、それらが必ずしも安全とは限りません。
天然由来のものの中にも、毒性やアレルギー反応を引き起こす可能性がある成分が含まれていたり、動物を原料としたものがあったりします。
さらに、天然由来と表示されている製品でも、実際には化学的な処理を経ている場合もあります。
食品を選ぶ際には、「天然由来だから安心」という思い込みを捨て、成分表示や栄養成分表をよく確認して、自分自身でしっかりと判断することが重要です。
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