骨粗しょう症は、骨が極めて脆くなってしまい、その結果として骨折のリスクが劇的に高まる病気です。この病気は特に女性に多く見られる傾向があります。
では、なぜ女性がこの病気に対して特にかかりやすいのでしょうか。その理由は、20歳をピークとした骨量(骨に含まれるカルシウムなどのミネラル成分)が男性よりも少ないことに加え、閉経によってエストロゲンの分泌が急激に減少するためです。
エストロゲンは、骨の吸収を抑制したり、新しい骨の形成を促す役割を持つ女性ホルモンですが、閉経後にはこのホルモンの生成が著しく減少してしまいます。
人間の骨は常に新しいものに生まれ変わる過程があり、骨を形成するためには十分なカルシウムを摂取することが不可欠です。しかし、逆に骨の生成を妨げる食品にはどのようなものがあるのでしょうか。
カルシウムの吸収を妨げる食品
カルシウムの吸収を妨げる食品としては、アルコール、カフェイン、糖分、食塩などが挙げられます。
それに加えて、リンを多く含む加工食品を過剰に摂取することにも注意が必要です。
リンはインスタント食品やスナック菓子などの加工食品に豊富に含まれており、私たちの食生活の中でもよく見かける存在です。
これらの食品を完全に排除するのは難しいかもしれませんが、少しでも摂取を減らす努力をすることが望ましいと言えます。
リンの働き
リンが悪い栄養素というわけではありません。
実際には、リンはカルシウムと結びついてリン酸カルシウムを形成し、歯や骨を構築する上で非常に重要な役割を果たしています。
カルシウムとリンを同時に摂取することで、その吸収がより促進されることが知られています。具体的には、カルシウムとリンを1:1の比率で摂取することで、カルシウムの吸収率が向上し、骨折予防に対して効果的であるとされています。
例えば、牛乳は100グラムあたりカルシウムが110mg、リンが93mgと、非常に良好な比率を誇ります。
吸収と再生
骨は常に吸収と再生を繰り返しており、骨を壊す細胞が古くなった骨を溶かして吸収し、新しい丈夫な骨を作る細胞が再生を行っています。
この二つの細胞のバランスが崩れると、骨粗しょう症が発症するのです。
血液中に存在するカルシウムは常に溶け込んでおり、運ばれたカルシウムの大部分は骨や歯の構成要素として利用されます。
この骨は体を支えるだけでなく、カルシウムを蓄える役割も果たしています。
もし血液中のカルシウムが食事から十分に摂取できない場合、骨からそのカルシウムを補うことになります。その結果、骨のカルシウムが減少し、最終的には骨粗しょう症を引き起こすことになります。
骨折しやすい場所
骨粗しょう症を患うと、わずかな衝撃で骨折したり、軽い負担がかかるだけで背骨が徐々に圧迫されてつぶれることがあります。
しかし、骨粗しょう症は骨折が発生しない限り、比較的無症状であるため、発見が遅れがちです。
自覚症状がないために、気づいた時には病状が進行しているのは非常に恐ろしいことです。
- 背骨(脊椎圧迫骨折)
- 太ももの付け根(大腿骨の骨折)
- 腕の付け根(上腕骨の骨折)
- 手首
骨粗しょう症の種類
・原発性骨粗しょう症・・・加齢や閉経、生活習慣の乱れが原因となるもの
・続発性骨粗しょう症・・・骨を弱くする要因となる病気や薬の使用が引き金となるもの
・特発性骨粗しょう症・・・突発的に発症し、急速に進行するもので、代表的な例として「妊娠後骨粗しょう症」があります。
いずれのタイプでも脊椎の骨折(脊椎圧迫骨折)が発生する可能性があります。
骨粗しょう症の進行
初期段階では進行が緩やかで、自覚症状もないため、通常の生活を続けることが可能です。
中期に入ると、骨密度が低下し、骨が脆くなってつぶれたり折れたりすることが増えてきます。
後期に入ると、少しの転倒や軽い衝撃で骨折が生じることがあり、突然の強い痛みを感じたり、徐々にうずくような痛みを感じることもあります。
骨粗しょう症の原因で一番多い加齢
加齢とともに、特に閉経後はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が急激に減少します。
この時期には骨を形成する細胞よりも壊す細胞が活性化しやすくなるため、骨粗しょう症を発症するリスクが高まり、ちょっとしたきっかけで骨折を引き起こす可能性が増加します。
女性の生涯において大腿骨の骨折は20%、背骨の骨折は30%に達するとされ、2人に1人が骨折を経験するというデータも存在します。
私の母は70代で大腿骨を骨折し、義理の母は80代半ばで背骨を圧迫骨折しました。骨折が引き金となって要介護状態になることが現実に多いと感じています。
骨粗しょう症を引き起こしやすい(原因となる)病気とは?
骨粗しょう症を引き起こす可能性のある病気には以下のようなものがあります。
生活習慣病
糖尿病や慢性腎臓病などが骨を脆くする要因となることが知られています。
ステロイド剤の使用が必要な病気
関節リウマチや膠原病の治療において過剰にステロイド剤を使用すると、骨が弱化する危険性があります。
そのほかにも、甲状腺機能障害、関節リウマチ、白血病などが関連していることが知られています。
骨粗しょう症という現代病
骨粗しょう症は、寿命が延びたことで引き起こされる深刻な現代病と考えられています。
医療や介護なしで自立した生活を送ることができる期間を「健康寿命」と呼びます。
日本人 | 男性 | 女性 |
平均寿命 | 80.21才 | 86.61才 |
健康寿命 | 71.27才 | 74.21才 |
平均寿命と健康寿命との間には、日本人男性が約9年、日本人女性が約12年健康ではない状態で生きることを示しています。
現在のように寿命が延びたことを考慮すると、以前は長生きできず、寝たきりで長期間過ごすことができなかったと思われ、これは高齢化社会に特有の問題だと言えるでしょう。
問題なのは、リスクが明らかであっても、骨粗しょう症は自覚症状が少ないため、実際に骨折が発生してから初めて「ああ、自分は骨粗しょう症だ」と認識することが多いという点です。
しかし、転んで骨折してからでは手遅れになってしまいます。
骨粗しょう症の予防
- カルシウムを十分に摂取すること(1日に800mgを目安に)
- ビタミンKをしっかり摂取すること(骨を丈夫に保つ役割を果たします)
- 日光に浴びること(カルシウムの吸収を助け、骨を作るビタミンDが生成されます)
- 運動や適度な負荷をかけること(刺激を与えることで骨は自ら強化される特性があります)
カルシウムの多い食品
牛乳、チーズ、干しエビ、ワカサギ、小松菜、ごまなどが代表的です。
ビタミンDの多い食品
きくらげ、あん肝、しらす、鮭、身欠きにしんなどが豊富に含まれています。
ビタミンKの多い食品
納豆、わかめ、のり、緑色の野菜などが含まれています。
骨粗しょう症に対する危機感が予防につながる
早期発見が難しいことが、骨粗しょう症の恐ろしさの一つであると考えています。
もろくなった骨は連鎖的に骨折を引き起こすため、自力で立つことが難しくなったり、最終的には寝たきりになる危険性があります。
早期発見が難しいのであれば、自ら積極的に予防策を講じて骨粗しょう症にならないようにすることが重要であると強く感じています。
幸運なことに、骨は鍛えることができるのです。
まだ希望が残っているうちに、まずは骨密度の検査を受け、食生活の見直しを行うべきだと考えます。
これは自分自身への戒めでもあります。
大好きなスナック菓子を完全にやめることは難しいかもしれませんが、量を減らすことは可能です。
骨は刺激を受けることで新陳代謝が活発になり、より強くなると言われています。
誰もが年を重ねていくのは同じですが、自分の体と良好な状態で長く付き合うためには、いたわりつつ鍛えることが必要だと思います。
今後、すでに弱っている骨を骨折させないために鍛えることが、私たちの健康にとって大きな救いになると信じています。
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