はじめに
抗真菌薬は一般的に医師の処方が必要な医薬品ですが、最近ではドラッグストアや薬局で手軽に購入できるスイッチOTC医薬品というカテゴリーがあります。このスイッチOTC医薬品を利用している方も多いのではないでしょうか。
スイッチOTC医薬品には抗真菌薬の他にも、目薬、鎮痛剤、抗アレルギー剤など、さまざまな種類の製品が含まれています。
スイッチOTC医薬品とは?
薬局やドラッグストアで、薬剤師がいる時間帯であれば誰でも購入可能なスイッチOTC医薬品については、ご存知の方も多いはずです。実際に手にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
スイッチOTC医薬品とは、病院で処方される医療用医薬品の中で、副作用が比較的少なく、安全性が高いとされるものを市販薬(OTC医薬品)として使用可能にしたものを指します。
OTC医薬品とは、医師の処方を受けることなく購入できる薬のことで、薬局やドラッグストアなどで自分自身で選んで購入できる「要指導医薬品」と「一般用医薬品」が含まれます。OTCは英語の「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」の略称で、対面販売によって薬を購入することを意味しています。これまで「大衆薬」や「市販薬」と称されていたものが、最近では国際的な用語として「OTC医薬品」という名称が広まってきています。
スイッチOTCの分類
スイッチOTC医薬品については、自己判断での使用が危険を伴う可能性があるため、十分な注意が必要です。この点については、後ほど詳しく説明いたします。
忙しい日常生活の中で、病院に行く時間がなく、スイッチOTC医薬品に頼った経験がある方も多いことでしょう。
市場には多くの薬が流通しているため、どの薬を選ぶべきか迷ってしまう方も少なくありません。
薬剤師に相談したことがある方も多いのではないでしょうか。
スイッチOTC医薬品は、使用が比較的簡単なものから、慎重な使用が求められるものまで、以下の3つのカテゴリに分類されます。それは、第一類医薬品、第二類医薬品、そして第三類医薬品です。それぞれに異なる特徴があります。
第一類医薬品とは?
第一類医薬品は、副作用や相互作用の観点から特に安全性に留意が必要な製品です。店舗では、消費者が薬剤師の説明を受けずに購入できないよう、手の届きにくい場所に陳列することが義務付けられています。この類の医薬品は、販売が薬剤師に限定されており、書面での情報提供が必須です。また、薬剤師が不在の時間帯には購入できない仕組みとなっています。
第二類医薬品とは?
第二類医薬品は、副作用や相互作用において注意が必要な製品です。この中には、さらに特別な注意が求められる指定第2類医薬品も含まれています。第二類医薬品には、風邪薬や解熱剤、鎮痛剤など、日常生活でよく使用される製品が多く存在します。専門家からの情報提供は努力義務とされており、薬剤師や市販薬を販売する資格試験に合格した「登録販売者」がいれば購入可能です。
第三類医薬品とは?
第三類医薬品は、副作用や相互作用の観点から第一類や第二類には該当しない一般用医薬品です。
第三類医薬品は、資格を持たない一般従事者からも購入可能ですが、薬剤師や登録販売者の管理・指導のもとでの購入が求められます。ネット販売や通信販売も許可されている一般用医薬品であり、販売時の情報提供に関する法的制限は存在しません。
真菌症について
誰もが一度は経験する可能性がある皮膚カンジダ真菌症は、感染症として広く知られています。この感染症は、男性だけでなく女性にも罹患することがあるため、注意が必要です。
特に女性の場合、膣カンジダ症が問題視されることがしばしばあります。
男性も、感染者である女性との性交を通じて感染することがあります。
(外陰腟炎や真菌感染症)は、よく見られる感染症であり、特に妊婦や糖尿病患者、抗菌薬を服用している方、免疫力が低下している時や風邪を引いている際、さらにはステロイドを服用している方に多く見られます。
この感染症の主な症状には、白や黄色のチーズ状のおりもの、腟壁及び腟外部周辺のヒリヒリした灼熱感、かゆみ、発赤などが含まれます。
カンジダ菌は目に見えないため、局所的に陰部など、痒みや症状がある部分にのみ塗布しても、皮膚には白癬菌が多く存在していることがあります。顕微鏡で皮膚の薄皮を調べると、症状がない部分でも白癬菌に感染している場合があります。抗真菌薬を塗布すると、白癬菌が逃げて健康な皮膚、たとえば臀部に寄生し、感染することがあるため、刷毛から臀部まで抗真菌薬を塗る必要があります。これらの症状は、皮膚科医の診察と診断を受けないと、正確に理解できないことが多いです。
皮膚カンジダ症と関連して膣カンジダ症が併発する可能性があるため、一緒に治療することが重要です。
そのため、皮膚科医だけでなく、婦人科の診察や内診、治療も必要となります。婦人科では内診を行い、膣洗浄を行った後、膣錠を一回入れてもらうことで、約1週間かけて効果を発揮しますので、治療もこの方法で完了します。素人が自己判断で膣錠を使用するのは、非常に危険な行為です。
口腔カンジダ体験記
ここでは、私が実際に経験した真菌症のエピソードをお話しします。
風邪気味だったため、手元にあった小青竜湯を飲んだところ、口腔内の舌が真っ白になってしまったのです!舌にピリピリとした痛みも感じ、驚いて急いで歯科を受診しました。すると、口腔外科の医師がいる大学病院に紹介状をもらい、口腔外科を受診したのです。
口腔外科医が口腔内を観察すると、これは口腔カンジダ症ですね、と診断されました。
風邪をひいて免疫力が低下した結果、口腔内の常在菌が異常に増加し、カンジダ菌が異常増殖したのです。治療法としては、フロリードゲルという抗真菌薬で含嗽するか、現在服用中の薬が多剤である場合、ファンキゾンシロップという黄色いペンキのような薬を処方されます。患者によって適切な薬の選択が異なります。また、薬を薄めて含嗽する場合と、原液のまま含嗽する場合があり、重症度によって口腔外科医が診断を行います。
これらはすべて日和見感染症に該当します。日和見感染症とは、がん、AIDS(エイズ)、または抗がん剤治療や長期の抗菌薬服用により免疫機能が低下している人において生じる、通常の健康状態では感染しないような弱い病原性の微生物による感染症のことを指します。このような感染を受けやすい人を易感染宿主と呼びます。結果として、免疫力が低下し、カンジダ菌に感染してしまったのです。このような状態になると、一般の歯科医院では治療が困難になりますので、口腔外科の医師がいる大学病院などに紹介されるのが適切でしょう。口腔機能外来という診療科が、口腔カンジダ症を専門に扱っています。
舌や口腔粘膜を検査キットの綿棒で検体を採取し、培養を行います。その結果、確定診断がなされるのです。
ここまで病気が進行すると、回復には非常に長い時間がかかりました。約2~3ヶ月もかかりました。
買ってはいけない抗真菌薬
これまでお話ししてきたように、病院に行くべきであるということを強調してきました。
また、「カビ」による皮膚や爪の感染症についても心配される方が多いでしょう。市販の抗真菌薬は、その悩みを解決してくれる便利な選択肢のように見えるかもしれませんが、ちょっと待ってください!抗真菌薬を自己判断で使用することは、思わぬ危険を招くことがあるのです。その背後には、予想外の落とし穴が潜んでいるかもしれません。
不適切な使い方は危険!
抗真菌薬は、真菌(カビ)による感染症に効果的な薬です。市販薬として広く知られているものには「ラミシール」や「エクシブ」といった製品があります。これらの薬は、軽度の皮膚のカビによる炎症や爪白癬(つめはくせん)などに対して効果があるとされています。しかし、自己判断での使用は非常に危険です!
たとえば、50代の男性が足の爪の変色と厚みの増加に悩み、市販の抗真菌薬を使用したものの、症状は改善せず、結局病院を受診したところ、糖尿病による合併症である爪白癬と診断されました。不適切な薬の使用により貴重な時間を無駄にしてしまったのです。
正しい薬を選べなかったり、使い方を間違えると、症状が悪化したり、副作用が現れたりするリスクが高まります。真菌感染は、他の病気が原因である場合もあるため、自己判断は非常に危険です。
抗真菌薬を自己判断で使用することは、こうした危険性を伴うのです。
日本で市販されている抗真菌薬をいくつかご紹介します。
- 皮膚用抗真菌薬
- クロトリマゾール:皮膚の白癬(水虫、たむし)、カンジダ症、皮膚真菌症の治療に使用されるクリームや軟膏。
- ミコナゾール:皮膚や粘膜の真菌感染を治療するクリームや軟膏で、水虫、カンジダ症、皮膚カンジダ症に効果的。
- エコナゾール:皮膚真菌症の治療に用いられるクリームや軟膏で、足白癬、カンジダ症、汗疱状白癬に適応される。
- 粘膜用抗真菌薬
- クロトリマゾール:口腔内のカンジダ症(口内炎)や膣カンジダ症の治療に使用されるトローチや膣錠。
- ミコナゾール:口腔内のカンジダ症の治療のための口腔用ゲルやトローチ。
- ナイスタチン:膣カンジダ症の治療に用いられる膣錠やクリーム。
- 爪用抗真菌薬
- テルビナフィン:爪白癬(爪の水虫)の治療のための塗布薬。
- イトラコナゾール:爪白癬や爪のカンジダ症の治療に使用される経口薬(処方箋が必要な場合あり)。
- 予防用抗真菌薬
- ミコナゾール:水虫やカンジダ症の再発防止のためのスプレーやパウダー。
- クロトリマゾール:靴にスプレーして水虫の原因菌の増殖を防ぐ製品。
- その他の用途
- 抗真菌シャンプー:セチルピリジニウム塩化物やピロクトンオラミンを含んだシャンプーは、フケや脂漏性皮膚炎の予防や治療に役立ちます。
このように、さまざまな抗真菌薬が存在しています。
副作用に注意
市販の抗真菌薬にも、副作用のリスクが存在することをご存知ですか?一般的な副作用には、皮膚の刺激や発疹、胃腸の不調などが含まれます。
たとえば、20代の女性が市販の抗真菌薬を塗布したところ、激しいかゆみと赤みが出現し、病院を受診しました。その結果、アレルギー反応が起きていたことが判明しました。
まれなケースではありますが、肝臓や腎臓に影響を及ぼしたり、アナフィラキシーショックといった重篤な副作用が発生することもあります。特に、他の薬を服用している人や、妊娠中・授乳中の方は特に注意が必要です!
抗真菌薬を自己判断で使用することは、こうした危険性を伴うのです。
薬が効かなくなる?
不適切な抗真菌薬の使用は、将来的な治療にも悪影響を及ぼすことがあります。短期間の使用や不十分な量での服用は、真菌が薬に耐性を持つ原因となることがあります。
たとえば、30代の男性が爪白癬の治療のために市販薬を使用しましたが、症状が改善したと思ったものの、再発してしまいました。後に病院で検査した結果、薬剤耐性のある真菌に感染していることが判明しました。
このような場合、より強力な薬が必要になったり、治療期間が長引くことになります。薬剤耐性菌が増加すると、社会全体に影響を与える公衆衛生上の問題にも発展する恐れがあります。
抗真菌薬を自己判断で使用することは、こうした危険性を伴うのです。
本当の病気を見逃すかも
市販の抗真菌薬に頼りすぎると、より深刻な病気を見逃してしまうリスクがあります。
たとえば、40代の女性が足の皮膚のかゆみと赤みを訴え、市販の抗真菌薬を使っていましたが、症状は改善せず、病院を受診したところ、糖尿病による神経障害と診断されました。
真菌感染は、糖尿病や免疫系の問題、ホルモンバランスの乱れなどが要因であることもあるため、自己治療で症状を誤魔化していると、本当の病気が放置され、健康を大きく損なう危険性があります。
抗真菌薬を自己判断で使用することは、こうした危険性を伴うのです。
飲んでいる薬に影響を来す恐れがある
現在、他の薬を服用している方は、抗真菌薬との相互作用に注意を払うべきです。
60代の男性が高血圧の薬と一緒に市販の抗真菌薬を服用した結果、めまいやふらつきを感じました。薬剤師に相談したところ、その影響で血圧を下げる薬の効果が弱まっていたことが判明しました。
薬物相互作用により、予期しない副作用が出たり、薬の効果が減少したりする可能性があるため、サプリメントを服用している方も同様に注意が必要です。
抗真菌薬を自己判断で使用することは、こうした危険性を伴うのです。
重症化してからじゃ遅い!
市販の抗真菌薬は、軽度から中程度の症状には効果があるかもしれませんが、重度の感染や広範囲の感染には、医師の処方による強力な薬が必要です。
爪白癬を市販薬で治そうとしていた50代の男性が、症状が悪化し、病院に行った際には爪の大部分が侵され、強い痛みを伴っていました。もし早期に適切な治療を受けていれば、ここまで重症化することはなかったでしょう。
市販薬で時間を浪費してしまうと、症状が悪化し、適切な治療を受けるのが遅れる可能性があります。そのため、早めの受診が治療効果を高めるポイントとなります。
抗真菌薬を自己判断で使用することは、こうした危険性を伴うのです。
お財布にも痛い…
市販の抗真菌薬は、医療保険が適用されないため、長期使用や強力な薬が必要になる場合、経済的に大きな負担となることが予想されます。
皮膚のカビによる炎症を市販薬で治そうとしていた主婦が、数ヶ月間症状が改善せず、病院を受診した際にはかなりの出費がかかってしまったのです。もし早めに病院に行っていれば、これほどの出費を避けることができたでしょう。
適切な診断と治療を受けることで、不必要な出費を避けることが可能です。
結論
抗真菌薬を安易に購入することは、健康面でも経済面でも大きなリスクがあることが明確です。真菌感染に対しては、自己判断をせずに、皮膚科医や婦人科医、内科医、口腔内科医、または眼科医に相談することが重要です。正しい知識を持ち、あなたの健康を守る努力をしましょう!
繰り返しになりますが、薬を勝手に使用することで、さまざまな危険が生じる可能性があることを常に心に留め、慎重に薬を使用することが大切です。