最近では、健康への意識が高まる中で、日本国内における加熱式たばこの需要が急激に増加しています。この加熱式たばこを使用している人々は、病気を避けたいという強い願望を持ちながらも、一方でたばこの楽しみを味わいたいという欲求を抱いているのではないでしょうか。
確かに、加熱式たばこは従来の紙たばこと比較して、有害物質の量が少ないことを前面に押し出しています。しかしながら、加熱式たばこが紙たばこに比べて健康への悪影響が少ないという誤解を持つことは避けるべきです。要するに、有害物質が減少したからといって、健康リスクが必ずしも低下するわけではありません。
加熱式たばこは、魅力的な広告やキャッチコピーを駆使したプロモーションによって、その普及率を高めています。周囲にも、健康を意識して加熱式たばこに切り替えたという人がいるかもしれませんが、これは非常に不思議な現象です。本当に健康を考えるのであれば、たばこを完全にやめることが最も効果的な選択肢であると言えるでしょう。
この記事では、加熱式たばこに関する基本的な知識をさらに深く掘り下げてまいります。
加熱式たばことは
加熱式たばこは「新型たばこ」とも呼ばれ、たばこ事業法の規制対象となる正式なたばこ製品です。この製品は、たばこの葉を電気で加熱し、そこから生成されるニコチンを含む蒸気(エアロゾル)を吸引する仕組みを採用しています。
紙巻きたばこと異なる点は、たばこの葉を燃焼させるのではなく加熱するということだけです。したがって、紙巻きたばこと同様の成分が含まれることになります。依存性のあるニコチンや、発がん性物質を摂取することに変わりはありません。
このことは、加熱式たばこにも受動喫煙のリスクが存在することを意味します。実際、加熱式たばこには健康への悪影響を否定できないとの警告が記載されており、世界保健機関(WHO)や多くの研究機関からも警鐘が鳴らされています。
加熱式たばこの種類
日本で流通している加熱式たばこについて、以下の3つの製品をご紹介します。このセクションでは、加熱式たばこの種類や各製品の特徴について簡潔かつ明確に説明します。
・アイコス(IQOS)
アイコスは、アメリカのフィリップモリス社によって展開されている製品であり、日本国内の加熱式たばこ市場で圧倒的なシェアを誇り、その割合はなんと70%に達しています。
この製品は、たばこ葉が入った専用スティックを電気的に加熱し、そこから発生する蒸気を吸入する仕組みとなっています。均等に加熱されることで、紙巻きたばこに近い味わいを楽しむことができ、多くのユーザーから支持されています。本体や専用のたばこは、コンビニエンスストアなどで簡単に購入することができます。
紙巻きたばこと比較すると、発生する煙の量は少なく、匂いも軽減されているとされています。しかし、使用後には専用スティックの燃えかすが残るため、1パック吸うごとに掃除が必要となります。アイコスの本体価格は約9000円です。
・プルームテック(Ploom TECH)
プルームテックは、日本たばこ産業株式会社(JT)が製造・販売している製品です。この製品は、グリセロールなどのリキッドを加熱し、その蒸気をたばこカプセルに通すことで、ニコチンを含むエアロゾルを吸入する仕組みになっています。
プルームテックの特徴としては、低温での加熱によりタールの気化を防ぎ、たばこ特有の匂いをほとんど感じさせない点が挙げられます。これにより、他の加熱式たばこと比較して、吸い心地が軽やかに感じられるようです。また、瞬時に起動し、オートストップ機能も備えているため、最後まで吸いきることなく、好きなタイミングでの喫煙を楽しむことが可能です。
・グロー(glo)
グローは、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンによって販売されている製品です。たばこ葉を電気で加熱し蒸気を発生させる仕組みはアイコスと似ていますが、加熱方式には異なった工夫があります。グロー本体に「ネオスティック」と呼ばれる専用のたばこスティックを挿入し、周辺から均等に加熱する周辺加熱方式を採用しています。
この製品の特筆すべき点は、フレーバーの種類が非常に豊富で、「ケント」と「ネオ」の銘柄があり、全体で15種類以上のバリエーションが揃っています。グローの本体価格は安価なもので980円から販売されており、この価格の手頃さも魅力の一つです。
加熱式たばこのデメリット
・健康被害
加熱式たばこのプロモーションには、「有害性物質が何%オフ」、「タールを何%カットし、嫌な匂いがほとんどしない」といった内容が含まれています。しかし、有害物質が少ないとされても、健康被害が少ないとは一切記載されていません。これらの情報源はたばこ会社から発信されているものであり、信頼性のある科学的根拠に基づいたものとは言えません。
第三者の研究機関による調査では、煙に含まれるニコチンの量が、紙巻きたばことほぼ同じであるとの結果が出ています。また、発がん性物質も一部減少しているものの、依然として確実に含まれているという事実があります。
加熱式たばこは比較的新しい製品であり、その研究がまだ完全には進んでいないため、不透明な部分が多く残されています。そして、たばこである以上、受動喫煙のリスクも当然存在します。前述のように、加熱式たばこも紙巻きたばこと同様の成分を含んでいるため、十分な注意が必要です。
目に見える蒸気ではないため、知らず知らずのうちに受動喫煙をしてしまうケースも考えられます。特に呼吸器に持病を抱える方が吸い込んでしまうと、健康に悪影響を及ぼすリスクがあるかもしれません。日本呼吸器学会も受動喫煙による健康被害について警告を発しています。有害物質が少ないからといって、健康被害が少ないというわけではないのです。
・禁煙できない
加熱式たばこは、有害物質が大幅に削減されているため、禁煙に効果が期待できるというイメージを抱かれがちですが、実際にはそれが正しいとは言えません。むしろ、禁煙の妨げとなっている可能性が高いのです。
紙巻きたばこよりもニコチンの含有量が少ないとしても、ニコチンを摂取するという事実は変わりません。毎日喫煙していた人にとっては、加熱式たばこでは物足りなさを感じ、満足するまでニコチンを摂取しようとする傾向が見受けられます。
その結果、紙巻きたばこを吸っていた時とニコチン摂取量がほとんど変わらなかったという調査結果も存在します。また、加熱式たばこと紙巻きたばこの両方を併用する人も見受けられます。このような行為は「二重使用(デュアルユース)」と呼ばれ、実際にニコチン依存が進行するリスクや、ニコチン摂取量が増加してしまう可能性が報告されています。
これらの点を考慮すると、加熱式たばこが禁煙の成功を導く助けにはならないことが理解できると思います。
・乳幼児の誤飲
これは紙巻きたばこにも共通する問題ですが、たばこを誤って摂取してしまうことは非常に危険です。一般的なたばこの場合、大人が2本、子供が1/2本を摂取すると、最悪の場合、命にかかわるニコチン中毒症状を引き起こす可能性があります。
特に乳幼児が誤ってたばこスティックを飲み込んでしまった場合は、すぐに吐かせる必要があります。飲み込んですぐにニコチンが体に吸収されるわけではないため、排出できれば中毒症状が出ることはほとんどありません。
・メンテナンスや充電
加熱式たばこには、使い捨てで掃除が不要なタイプも存在しますが、アイコスやグローなどの製品は基本的にクリーニングが必要です。たばこの葉が剥き出しになっているものやリキッドを使用するタイプは、放置しておくと汚れが付着してしまいます。
1パック吸った後には掃除をするようにとのメーカーからの案内もあります。クリーニングを怠ると、たばこの風味が落ちてしまう恐れがあります。また、専用デバイスが無ければ喫煙できないため、充電を忘れたりデバイスを持ち歩かない場合は、喫煙を我慢するしかありません。デバイスも機械である以上、故障する可能性も考慮しなければなりません。
・化学物質の混入
加熱式たばこには、多種多様なフレーバーが販売されていますが、これらの香り成分に使用されている化学物質が人体に与える影響については、まだ明確には分かっていないのが現状です。グリセロールやプロピレングリコールなどの化学物質を長期間肺に取り込むことが、どのような結果をもたらすのかは未知の領域といえます。
まとめ
加熱式たばこを購入される方の中には、少なからず禁煙への意志を持っている方が多いのではないでしょうか。しかし、禁煙を成功させるための最良の選択肢は、たばこをまったく吸わないことです。加熱式たばこの購入を悩むのではなく、禁煙外来を受診することを強くお勧めします。
自分の力で禁煙に挑むよりも、医療機関を利用する方が遥かに成功率が高まります。これから禁煙を真剣に考えている方は、ぜひこの機会に試してみることをお勧めします。
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