【はじめに】
スピーカーケーブルとは、非常に情報が得づらいジャンルの一つであると感じています。そのため、多くのスピーカーケーブルに関するレビューは、スペックに基づいた表面的な情報に留まることが多く、実際の音質や使用感について深く掘り下げられていることは少ないのが現状です。
そこで今回は、最近特に注目を集めている「立井電線のスピーカーケーブルT-4S8」と、広く知られている「カナレ4S8」を対比しながら、立井電線のスピーカーケーブルについて詳しく考察し、その特性や音質に迫ってみたいと思います。
【立井電線T-4S8とカナレ4S8の比較】
まず初めに、両商品の名前が非常に似ているため、「果たしてこれは大丈夫なのか?」という疑問が自然と湧き上がります。
インターネットで「タツタ立井電線」と「カナレ電気」を調査してみると、実はこの二つは異なる企業であることが明らかになりました。タツタ立井電線は設立が早いものの、一般消費者にとってはカナレ電気のスピーカーケーブルの方が馴染み深い存在であると言えるでしょう。
カナレ4S8のスピーカーケーブルは、高い解像度を持ち、繊細な音を忠実に再現し、さまざまな音楽ジャンルに柔軟に対応します。さらに、音質が明瞭で、音の抜けも非常に良好です。これは視覚的には「見晴らしが素晴らしい」と表現することもできるでしょう。
多くの人が実感していることでしょうが、カナレのスピーカーケーブルは非常に汎用性が高いです。原音に忠実な音質を提供してくれるため、その欠点を見つけるのが難しいほどの完成度を誇ります。
一方、立井電線T-4S8はその名称がカナレに似ているため、同様の音質を期待してしまうところですが、実際のところはどうなのでしょうか。立井電線T-4S8は、音が各々独立せず、接触し合っているかのような印象があり、音の緻密さに欠ける印象を受けます。
この立井電線T-4S8には、BELDENのスピーカーケーブルのように音楽の雰囲気を重視する特性と、カナレのケーブルのように高い解像度を目指す両方の良い点を併せ持っているという特徴があります。これを考慮すれば、立井電線T-4S8は理想的な音質を追求して設計されたスピーカーケーブルであると言えるでしょう。
しかしながら、実際には音楽の雰囲気を重視しすぎた結果、特異な音に仕上がってしまっている点が残念です。音の奥行き感や音抜け感が不足していることも否定できません。
このケーブルは音楽が持つ雰囲気と解像度のバランスを何とか保とうとしているものの、全体的にはまとまりに欠ける印象を与えます。理想を現実のものにすることがいかに難しいかを実感させられますね。
【立井電線T-4S8の性格はつかみ所がない】
その結果として、立井電線T-4S8は、つかみ所のない性格を持ち合わせており、オーディオ初心者が手を出すにはあまり適していないスピーカーケーブルであると言えるでしょう。このケーブルは特に癖が強く、アンプやCDプレーヤーのパフォーマンスを損なうリスクがあります。
得意とする音楽ジャンルとしてはオーケストラやジャズが挙げられ、女性ボーカルについては比較的普通に表現することができるものの、一方でEDMに関しては苦手な印象が否めません。例えば、ケミカルブラザーズの「PUSH THE BUTTON」アルバムとの相性があまり良くなく、ドンシャリ(低音と高音の差)で音に立体感を出すべきところが、実際には平面的な音に仕上がってしまっていました。
カナレ4S8は、原音に忠実な音を提供してくれるため、音チェックには最適ですが、立井電線T-4S8はその癖の強さ故に、音チェックにはあまり向かないと言えるでしょう。
【初心者にはカナレ4S8がしっくりくる】
商品名が「T-4S8」と「4S8」と非常に似ているため、どうしてもその音質を比較せざるを得ない状況に置かれます。カナレ4S8で音楽を楽しんだ後に立井電線T-4S8を試すと、音の表現が異なるため「う~ん…」といった感想を持たざるを得ないのが実情です。
価格面に関しては、どちらも似たような価格帯に位置していますが、立井電線T-4S8はスピーカーケーブルに雰囲気や音楽性、解像度を持たせようとした意欲作であるものの、カナレ4S8と比較しなければまずまずの評価を得られたかもしれません。
【あくまで私の価値観ですが…】
オーディオにあまり興味のない方からすると「えっ?」と思われるかもしれませんが、オーディオの世界ではケーブルを変えるだけで音が大きく変わることがあるのです。スピーカーケーブルはその最たる例と言えるでしょう。
ケーブルメーカーごとに目指している音色は異なり、同じものは存在しません。もちろん、人によって聞こえ方や音の価値観は異なるものです。
ここで立井電線とカナレのスピーカーケーブルについて様々な意見を述べてきましたが、それもまた私の個人的な聞こえ方や価値観に基づく意見に過ぎません。この二つのスピーカーケーブルの中でどちらをお勧めするかと問われれば、私は「カナレ4S8」を選びます。
単純に、聞きやすい音質を持つ方をお勧めしたいと考えています。余裕がある際には、試しに「立井電線T-4S8」を購入してみるのも良い選択かもしれません。
【まとめ】
スピーカーケーブルは試聴ができない商品であるため、頼りになるのはやはりレビューということになります。プロによるレビューでも、本音が書かれているものは少なく、一般的な商品サイトのレビューを読むと「この人にはこう聞こえるのか…」と、実際には人によって感じ方が全く異なる状況に直面することも少なくありません。
人それぞれの感じ方が異なることをお伝えした上で、あえて推奨するスピーカーケーブルについて言及させていただいたのは、オーディオ初心者の方が迷わないようにとの思いから、はっきりと述べた次第です。
それでは、素晴らしいオーディオライフを心からお楽しみください!
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