子どもが咳をしたり、鼻水が出始めると、「風邪を引いてしまったのかもしれない…」「明日は保育園や学校をお休みしなければならないかもしれないな…」といった心配を抱える方は多いのではないでしょうか。
子どもは風邪を引きやすいものですが、どれだけ注意を払っても、大人のようにしっかりと健康管理を行うのは難しいことです。そんな時、親としては早く回復してほしいという思いから、つい早めに薬を与えてしまいがちです。これは、症状が悪化しないようにしたい、あるいは今の状態を維持して休まずに治ってほしいとの親の都合から来るものでもあります。
「病院に行く時間がないけれど、この咳や鼻水をなんとかしたい!」という気持ちが高まることもあるでしょう。その際、一体どのように対処しますか?市販の薬を購入することを検討するかもしれません。しかし、その薬は果たして本当に安全なのでしょうか?
実は子ども用の市販のかぜ薬は小児科医はおすすめしていない
病院に行く時間が確保できない状況で、薬が必要だと感じるものの、少しの咳や鼻水のために病院に連れて行くのは手間だと感じる方もいらっしゃるでしょう。そうした場合、市販の子ども用かぜ薬がドラッグストアで手軽に手に入ることから、その選択肢を選ぶ方が多いのも理解できます。ストックしておくことで、同様の症状が出た際にもすぐに使用できるのは大変便利です。
しかし、実際には子ども用の市販かぜ薬は、小児科医からはあまり推奨されていないのが現実です。医師としては、風邪ではなくもっと深刻な病気の可能性も考慮し、自己判断で済ませずに病院に連れて行ってほしいという思いがあるでしょうが、市販薬には子どもにとってあまり好ましくない成分が含まれていることが多いのです。
買わない方がいい ①子ども用の市販のかぜ薬、シロップ薬(せき止めや鼻水止め含む)
市販のかぜ薬は、子どもにとって飲みやすい味付けがされているため、手軽で便利だと感じる方が多いですが、実際にはその中には望ましくない成分が含まれていることが多いのです。病院で処方される薬は、例えば熱が出た場合には解熱剤、鼻水が出ている場合には痰を切れやすくする薬、咳がひどい時には気管支を拡張する薬など、必要な薬だけが適切に処方されます。
しかし、市販薬にはさまざまな効果を持つ成分が混合されているため、必要な成分が含まれている一方で、逆に不要な成分も含まれていることがしばしばあります。今の体にとって不必要な成分を摂取することは、何の意味もないのです。
さらに、子ども用の市販薬には第1世代抗ヒスタミン薬がほとんどすべてに含まれていますが、この薬はそのメリットよりもデメリットが大きいとされています。解熱薬が含まれている場合、毎食後に薬を服用すると、熱がないのに不要な解熱薬を摂取することになってしまいます。また、解熱成分の量が少ないことで、発熱時にはかえって有害になる可能性がある成分が含まれていることもあります。
また、一般的に小児科ではあまり使用されていない、エビデンス(科学的根拠)の乏しい去痰薬が含まれていることもあります。飲む人や体調によっては、あまりおすすめできないため、自分の子どもには与えないとする小児科医も存在します。そのため、小児科医としておすすめできる市販薬は一つも存在しないとの意見が多いのです。
買わない方がいい ②冷却ジェルシート
熱がある子どものおでこに冷却ジェルシートを貼っている光景は、現実だけでなく、ドラマや漫画の中でもよく見られるシーンかもしれません。しかし、実際にはこれにはあまり意味がないことをご存知でしょうか。
初めて貼り付けた時には冷たくて気持ちが良いと感じるため、熱が出ている時には効果があるように思われがちですが、実際には熱を下げるのではなく、冷却によって頭がすっきりし、心が落ち着くといった効果に過ぎません。額に冷却ジェルシートを貼ることだけでは、解熱効果を期待することはできません。熱を下げるために額以外にも脇や首筋に貼ることもありますが、これも同様に効果が薄いです。
冷却ジェルシートを使用するよりも、タオルで包んだ保冷剤を脇の下に置くなどして冷やしてあげる方が、はるかに効果的です。病院に行った際に子どもが冷却ジェルシートを貼っていても、医師から特に指摘されないことが多いかもしれませんが、実際にはその効果について疑問を持たれている可能性があります。熱が出ていると一目で分かるくらいの効果しかないため、使用を控えた方が良いかもしれません。
さらに、寝ている子どもの額に貼っていた冷却ジェルシートがずれて、鼻や口を覆ってしまうことで窒息の危険がある事故も報告されています。特に月齢の低い子どもにおいては、苦しい時でも自分で剥がすことができないため、安全を守るためにも極力使用を避けることが非常に重要です。
まとめ
現在の時代、わざわざ病院に行かなくても市販薬で対処できることが増えてきましたが、混雑していてなかなか受診できないなど、さまざまな事情がある中で、できるだけ病院に行き、専門家に状態を見てもらい、必要な分だけの薬を処方してもらうことが極めて重要だと考えます。
冷却ジェルシートは解熱効果はありませんが、冷感を与えることによって苦痛を和らげる効果が期待でき、子どもの気持ちを落ち着かせたり、保護者が落ち着いた子どもを見て安心感を得たりする心理的な効果もあるかもしれませんので、自己判断で使用することも考慮してみるのも良いでしょう。
いずれにせよ、子どもの健康を守るためにも、市販薬を選ぶ際には慎重に判断していくことが大切です。
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