家族を失うことは、心に深い悲しみをもたらす出来事です。葬儀を行う際には、多くの手続きや準備に追われ、気がつけば時間があっという間に過ぎ去ってしまいます。しかし、その後数日が経つと、心の中に強い孤独感や喪失感が押し寄せてくることがよくあります。
そのような状況の中で、避けては通れないのが、お墓についての考察です。
先祖代々のお墓が存在し、そこに入ることが初めから決まっている場合は、話が比較的スムーズに進みます。しかし、そうしたお墓がない場合も多く、「やはり新たにお墓を購入しなければならないのだろうか」と悩む方も少なくありません。
では、新たにお墓を購入する場合、どのような観点で考えればよいのでしょうか?
お墓にはさまざまな種類が存在する
お墓は大きく3つの種類に分けることができます。
(1)宗教施設の墓地
お寺で管理されているお墓は「寺墓地」と呼ばれ、日本国内では非常に一般的な形態です。また、教会が管理する「教会墓地」も存在しますが、その数は寺墓地に比べると少ないのが現状です。神道においては、宗教的な理由から神社内に墓地を設けることは行われていないため、ここでは一般的な寺墓地に焦点を当ててお話しします。
(2)お墓専用の墓所
霊園と呼ばれる、複数のお墓が集まっている施設も日本国内では広く普及しています。
霊園は主に宗教法人や公益法人によって運営されています。また、地域によっては、昔から墓所として利用されてきた場所がそのまま残っていることもあり、田畑や山間部に「こんなところにお墓が…」と驚くような光景が広がることもあります。しかし、こうした霊園以外の墓所には原則としてその土地の住民しか入ることができないため、ここでは霊園に特化してお話しを進めます。
(3)納骨堂
納骨堂とは、建物内に納骨スペースが設けられた施設のことを指します。一般的なお墓が一戸建てだとすれば、納骨堂はお墓の集合住宅のような存在と考えると分かりやすいかもしれません。以前はお墓が完成するまでの仮の保管場所として利用されていましたが、近年ではお墓そのものとして使用されるケースが増えてきています。
お墓は購入できるものなのか?
寺墓地、霊園、納骨堂のいずれにおいても、運営主体に対して費用を支払ったとしても、その土地や施設に対する所有権は発生しません。お墓を取得する際には、数十万から数百万円の初期費用が必要となりますが、これはあくまで「場所の利用料」であり、「その場所にお骨を収める権利」を購入していることになります。
「永代供養料」を支払うことで、子孫が継承できるお墓も存在しますが、「13回忌まで」といったように、使用期限が設けられているお墓もあるため、選択肢を慎重に考える必要があります。
お墓は本当に購入しなければならないのか?
お骨を収めるためのお墓は、基本的には購入する必要があります。日本では「墓地、埋葬等に関する法律」があり、宗教的感情や公衆衛生に配慮する観点から、認可された墓所以外でお骨を埋葬することは禁止されています。たとえ自宅の庭であっても、無断でお墓を作ることは許可されていません。
お墓を持ちたくない場合の選択肢として「散骨」がありますが、国内には散骨を禁止する法律は存在しないものの、上述の通りお墓以外での「埋葬」はできないため、自然に還すことが前提となります。しかし、散骨を行う際には、散骨場所の所有者や近隣住民の意向を考慮する必要があり、実際に散骨を行える場所は限られている点にも注意が必要です。また、遺骨を粉砕して人骨であることが分からないようにする手間もあるため、現実的には簡単ではありません。
自宅でお骨を保管している人もいる
中には、お墓を購入するための資金が不足している、どの墓地にするか決められない、利用可能なお墓がない、または故人を常に身近に置いておきたいといった理由から、自宅に骨壺を置いている方も少なくありません。
仏教の慣習では、四十九日以降に骨壺をお墓に納めて納骨式を行い、自宅には位牌を置くのが一般的ですが、自宅に遺骨を置いておくことは「埋葬」には当たらないため、特に法律上の問題は発生しません。
自宅で遺骨を保管することは「手元供養」と呼ばれ、通常は分骨した一部のお骨を自宅に置くことが一般的ですが、先述のような事情から全てを手元供養するケースも見受けられます。
ただし、自分が生きている間は手元供養で問題がなくても、自分が他界した後、そのお骨はどのように扱われるのかという点も真剣に考慮する必要があります。遺族は元々存在していたお骨を含めて、2名分のお墓を用意しなければならなくなる可能性が高いでしょう。
お墓の管理は誰が行うのか?
お骨をお墓に収めた後は、定期的にお墓を訪れる必要があります。その理由は、亡くなった方が寂しい思いをしないためという感情的な理由だけでなく、実際にはお墓のメンテナンスが重要だからです。
長期間放置されたお墓は、汚れが目立ったり、雑草が生い茂ったり、供花が枯れたまま放置されて見た目が荒れてしまうことがあります。
近くのお墓であれば容易にお参りできますが、遠方のお墓となると、なかなか足を運ぶことが難しくなることもあります。また、配偶者などのお墓であれば自分が気をつけている限りは問題ありませんが、自分自身が亡くなった後にそのお墓に入る場合、子どもなどが定期的に訪れることができるのかという観点も考慮しなければなりません。
永代供養墓という選択肢
「お墓のことで子供に負担をかけたくない」「自分がこの世を去った後にお墓の管理をしてくれる人がいない」といった場合には、永代供養墓という選択肢が存在します。
これは、墓地内の納骨堂や集合墓にお骨を納め、その管理を墓地を運営する宗教法人などに任せる方法です。個別のお墓を持つ場合に比べて費用が抑えられるため、特に魅力を感じる方も多いことが特徴です。
永代供養の具体的なシステムは墓地によって異なりますが、最初に費用を支払うことで、その後は管理費などが不要であるケースも多いです。また、永代にわたってお骨を入れることができる場合もあれば、一定の期間経過後にお骨が墓地内に散骨され、合祀されることもあります。
まとめ
以上でこの記事は終了です。自宅にお墓がない、入れない、または入りたくないといった状況にある場合には、新たにお墓を購入することが可能です。ただし、自分自身が亡くなった後、そのお墓がどのようになるかをしっかりと考慮し、必要に応じて永代供養墓も選択肢として検討してみてください。
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