牡蠣には多くの産地や種類、そして多様な食べ方が存在します。その中でも特によく見かけるのが生食用と加熱用の牡蠣の違いです。今回は、これらの違いについて詳しく解説し、なぜ生食目的で加熱用の牡蠣を購入することが推奨されないのかをお伝えしていきます。
加熱用と生食用の違い
加熱用の牡蠣は、加熱によって細菌を殺菌することが可能です。そのため、特定の海域に制限されることなく、豊富な栄養分を吸収し、味わいが濃厚で身がふっくらとした特徴があります。ただし、収穫後は水洗いされ、直ちに出荷されるため、加熱用の牡蠣を生食することは非常に危険であり、食中毒のリスクが高まります。たとえその日の朝に水揚げされた新鮮な牡蠣であっても、加熱用の牡蠣は生食してはいけません。食中毒の危険性が高いからです。
加熱用と生食用の違いについて、鮮度だと考えている方も多いかもしれませんが、実際には牡蠣が水揚げされる海域の違いが主な要因です。さらに、生食用の牡蠣は、滅菌された海水で浄化した後に出荷されるというプロセスを経ています。
指定海域とは
指定海域とは、保健所が生食用の牡蠣を出荷して良いと定めた海域のことで、一定の水質基準を満たした清浄な海域を指します。
牡蠣は1日に最大200リットルの海水を吸い込み、吐き出しながら成長します。この過程で、海水に含まれる栄養分やプランクトンを吸収します。沿岸や河口部では栄養分やプランクトンが豊富で、牡蠣も大きく成長し、味も良くなりますが、同時にさまざまな食中毒の原因となる有害物質も吸収してしまいます。
指定海域では、保健所による定期的な水質検査が行われており、合格した水質で捕獲された牡蠣のみが生食用として出荷されることができます。
食中毒の原因
「牡蠣にあたる」という表現をよく耳にするかと思いますが、これは食中毒のことを指します。
生牡蠣を食べることによって食中毒を引き起こす原因としては、「ノロウイルス」「腸炎ビブリオ」「貝毒」「牡蠣アレルギー」の4つが挙げられています。
「ノロウイルス」
この中でも最も頻繁に食中毒を引き起こすのが「ノロウイルス」です。感染後、1日から2日以内に症状が現れ、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛を引き起こします。通常は1日から2日で回復しますが、下痢や嘔吐による脱水症状が起こることがあります。ノロウイルスにはワクチンが存在しないため、牡蠣を生食する際に防ぐ手段はありませんが、中心温度85〜90℃で90秒間しっかりと加熱することで無毒化することができます。
「腸炎ビブリオ」
「腸炎ビブリオ」に感染すると、約12時間前後で症状が出始め、激しい腹痛や下痢を引き起こします。通常は1日から2日で軽快しますが、下痢による脱水症状には注意が必要です。こちらもワクチンはないため、牡蠣を生食する際の防御策はありませんが、中心温度85〜90℃で90秒間十分に加熱することで無毒化することが可能です。
「貝毒」
「貝毒」には主に二つの種類があり、「麻痺性貝毒」と「下痢性貝毒」が存在します。
「麻痺性貝毒」に感染すると、食後およそ30分程度で症状が現れ、手足や唇のしびれ、頭痛が生じ、重症の場合には12時間以内に呼吸困難を引き起こすことがあります。通常は12時間を過ぎると回復に向かうことが多いですが、死亡例も報告されているため、早急に医療機関を受診することを強く推奨します。
「下痢性貝毒」に感染すると、食後30分から4時間以内に発症し、下痢や吐き気、嘔吐、腹痛が見られます。通常は3日以内で回復します。
この二つの「貝毒」は、「ノロウイルス」や「腸炎ビブリオ」のように加熱しても毒性が減少しないため、加熱しても症状を防ぐことはできません。しかし、食品衛生法により二枚貝の食用部分に含まれる毒の量には規制が設けられているため、市場に流通している貝類で発症することは稀です。
「牡蠣アレルギー」
食中毒ではなく、「牡蠣アレルギー」によって食中毒に類似した症状を引き起こす方もいます。牡蠣にあたると訴える方の中には、実は「牡蠣アレルギー」である可能性があります。症状としては、下痢や腹痛に加え、呼吸器症状や蕁麻疹が見られ、重篤な場合にはアナフィラキシーショックを引き起こし、生命に関わる危険性があるため非常に注意が必要です。
生食用の牡蠣の浄化
牡蠣は1日に200リットルもの海水を吸い込んで吐き出す特性を活用し、紫外線やオゾン、薬剤などで滅菌された海水を循環させる水槽に水揚げ後、8〜24時間浸けておくことで、牡蠣が滅菌された海水を吸収し、同時に細菌や汚れを吐き出すことによって、食中毒の原因となる細菌を減少させることができます。この際、吐き出した汚れは再び吸収しないように工夫されています。
牡蠣の消費期限
加熱用の牡蠣の消費期限は水揚げ日から5日間、生食用の牡蠣は水揚げ日から4日間と設定されています。これは賞味期限ではなく消費期限であるため、気をつける必要があります。付着している雑菌や、牡蠣の体内に蓄積されている食中毒の原因となる菌が増殖し、食中毒のリスクが高まるため、この消費期限を厳守することが重要です。
冷凍した牡蠣は、十分に加熱することで約1か月程度は食べることが可能ですが、それ以上の保存は避けることをお勧めします。
まとめ
- 加熱用の牡蠣は中心温度85〜90℃で90秒間しっかりと加熱することが必要です。
- 生食目的で牡蠣を購入する際は、水揚げされた日に限らず必ず生食用の牡蠣を選ぶことが大切です。
- 牡蠣の消費期限は必ず守ることが、食中毒を防ぐために重要です。
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